カラムは静かに建物の中へ侵入した。

屋根裏をだいたいの目星をつけて調べていく。
ある一室の上で、手早く天井に隙間を作りそっと中の様子を窺った。
入り込んだ眩しい光に目を細めると、くぐもった呻き声が聞こえてきた。
明らかに情事の最中らしき音に、とっさに隙間を閉ざそうとしたが、光に慣れた目が、見慣れた騎士団の紋様を捉えてしまう。
視線を移動させれば、乱れたベッドの上で、二人の身体が重なり合っていた。

驚きに動きを止めたカラムであったが、どこかでやっぱりな、とも思っていた。
上着を脱いだだけのユリエルが、全裸のノアにのしかかって蹂躙している。
踏み躙っているように見えるのは、ノアの両手が縛られ、苦しげに歪んだ白い頬を涙が途切れることなく伝っているからだ。

他人の情事など覗く趣味などなかったが、視線を逸らすことができなかった。

「ぁっ…んん」

ユリエルが動くたびに甘く響いてくる。同じ男なのに、その紅く染まった唇から漏れるかすれた声は、女よりもひどく艶やかだった。
汗が玉となって、薄桃に上気した滑らかな肌を流れていく。
嫌がっているように見えても、白くほっそりした足は揺れながら、離すまいとユリエルに絡み付いているようだ。

何も知らないと思っていたのに、すでに堕とされていた。
妖艶で、淫らな姿だった。

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