11

光は次第に大きくなって、悪鬼のすべてを飲み込んだ。
悪鬼を覆ってしまうと、光は徐々に明るさをなくしていく。そうして、ついに消えてしまうと、そこにいたはずの悪鬼の姿も、完全になくなっていた。
それと同時に、他の悪鬼の気配も感じられなくなっている。

これでもう大丈夫だ。
そう思って振り返ると、呆然としながらこっちを見ていた高社君とバッチリ目が合った。

今の、しっかり見られてた、よな……?

「ちょ……、ちょっと! いきなり前に出てきたら危ないじゃない! 開東様が退治してくれなかったら、怪我どころじゃすまなかったんだよ? ていうか、今、悪鬼を退治したのは開東様なんだよね? そうだよね!?」

腰を抜かしたように座り込んでいた高社君は、急に立ち上がると、まくし立てるようにそう言った。
なんだか物凄い勢いで、今度はこっちが呆然としてる。

「うん、そうに決まってるんだから。やっぱり凄いよ、開東様は。結界結びだけじゃなくて、ランクが高い悪鬼まで消滅させちゃうんだから」

高社君は、カマイタチを退治したのは朔だと結論づけたらしい。

……訂正はしなくてもいいよな。
朔がやたらと目隠しの結界を張っていたみたいだし、俺たちの姿は他のやつらには見えなくなっていたはず。悪鬼を消したのは何者か、だれにもわからないだろう。
って考えてたところに、朔が俺たちに近づいてきた。

「真緒様」
「開東様、助けていただいてありがとうございました! こんな僕を開東様が助けてくださって、すごく嬉しいです」

俺を押し退けて、高社君が朔の前に出る。
頬を染める高社君は可愛いんだけど、兄貴のことが好きだったんじゃなかったっけ?

「無事で何よりです」
「はい!」
「では真緒様、参りましょう」

そう言うや否や、朔は俺の腰を片腕で引き寄せた。
クールな朔の対応にも、感激して目を潤ませていた高社君は、急に鬼の形相になって俺をにらむ。
はっきり言って、そこらの悪鬼よりも怖いんですけど。

「朔……」

今後の友好関係に亀裂が入りそうなので、俺は朔から離れようとしたが、朔の手はまったくもって離れなかった。

「約束の日ですよ。お忘れですか?」

約束の日──。
低い声が吐息とともに耳に囁いたセリフに、瞬時に俺の全身は真っ赤になった。

「真緒様には手当てが必要なので、失礼します」
「あっ、開東様!!」

固まっていた俺は、風を操った朔に、軽々と運ばれたのだった。







「さ、朔! 兄貴は!? 一緒にいなくてもいいのかよ?」
「結斗様は、事後処理中ですよ」
「でも、具合よくないんだろ?」
「体調も良くなっていますし、生憎生徒会は優秀ですので、俺がいなくても問題はないです。それに、結斗様なら、あのくらいはそう煩わしい仕事でもないでしょう」

だからいいだろう? とばかりに片眉を上げた朔は、ベッドに押し倒した俺のネクタイを解きにかかった。

朔が俺を連れてきたのは、朔の部屋にあったベッドの上だった。
俺が暴れてもびくともしないくらい、頑丈で立派なベッドだ。
学生にこんな寝具は必要だったのだろうか、なんて考えたのも一瞬で、朔の黒い目に見つめられて、俺の体が竦む。
肉食動物に見据えられた気分だ。

「今、昼間、てか俺、授業中……」

朔の指をつかみながら言うと、ネクタイを弄っていた指が止まった。かと思ったら、俺の胸元へするりと動いた。

「わっ」
「一日の終わりにはまだ早いのですが、大仕事をこなした今日は仕方がないです。それに、可愛い乳首に呼ばれてしまったら、どうしようもありませんから」
「んなアホな、朔、……あっちょっと!」

シャツの上から乳首をつねられた。
指はいやらしく動いているのに、朔の熱の籠もった瞳はものすごく色っぽくて、ドキドキする。

「俺から先生に話しておきますので、今日の授業は諦めてください。真緒様も、今日はたくさん浄化させたので、お疲れでしょう。俺もあなたの助けが必要です」
「朔……」

俺の助け。
朔が、俺とこんなことをするのは、それが必要なことだからだ。

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