鎖の森の外れにある、この大きな広場は、以前から実技の授業に使われているらしく、特別な結界が張られている。
その森側の方で、三年が悪鬼を誘い出す呪文を唱えると、すぐに三匹が現れた。



悪鬼が見せる姿はいろいろある。
レベルが低い悪鬼は、自分自身を形作る力も弱いから、サイズが小さかったり影も薄かったりする。
だけど、レベルが高い奴でも小さく擬態することもあるから、油断はできない。

姿形は、地球上でみかける生物のようなものが殆どだった。それは、悪鬼を生み出す人間の思念が影響しているかららしい。
たまに人間の姿をしている悪鬼もいるけど、これがまた質が悪かったりするんだ。一番、人間の影響を強く受けているものだから。



姿を見せた三匹は、犬や鷲みたいなのと、そのうち一番ランクが高そうなのは、大きい豹みたいな姿をしていた。
影の塊だから黒豹みたいに見えるけど、かなりまがまがしい邪気を放っている。
強そうなそいつとは、兄貴と朔が対峙した。

「会長様、お気を付けください」

隣にいる高社君は、兄貴たちを固唾を飲むようにしながら見守っている。

まず、朔が黒豹を結界で囲い込んだ。
すばしっこい黒豹をいとも簡単に捕えたのは、さすが朔だなって感じだ。

最初に結界を施すのは、悪鬼を地に縛り付けて、他への被害を防止したり、術の狙いを定めやすくするためにも必要だった。術によっては、広範囲に影響するものもあるから、それを防ぐ役割もある。

次に、動きが制限された黒豹に向かって、兄貴が九字を切った。黒豹が、結界の中で大きくもがく。
だけど、一度の術では黒豹を弱らせただけで、消滅までには至らなかった。

「守れ、風の盾」

黒豹が裂けた口を大きく開けた瞬間、朔が結界を強化した。
黒豹が吠えると、口から黒い影が飛び出して、ビリビリと空気が震動するのが伝わる。けど、黒い影はあっという間に朔の結界に吸収された。

「開東様、凄い」

うっとりする高社君をよそに、俺は兄貴のことが気がかりだった。
兄貴なら、あの程度なら一発で仕留められると思ったのに。
まだ、体調が戻りきってないのか心配になる。

再び兄貴が九字を唱えると、ようやく黒豹は消滅した。
朔が結界を消し、それを見届けていた兄貴が笑顔になった。

「スゴいスゴい! やっぱり、会長様は素敵だよ」

昂揚した高社君が、ほっぺたを赤く染めていると、生徒たちからは拍手だけじゃなくて、黄色い声援や、応援団みたいな野太い声が飛んだ。
それがどっかのアイドルを呼ぶファンたちみたいで、ちょっと、いや、かなりひく……。

「もう、うるさいな! ちょっとは会長様の余韻に浸らせてよ」
「あれは、応援団かなんか?」
「違う。親衛隊だよ、しんえいたい!」
「親衛隊ー?」
「うん、ちょーウザイの。あの可愛子ブスッ子たちが開東様で、むさ苦しいゴリオたちが会長様の親衛隊」

や、やっぱりアイドル扱いなんだ、兄貴たち。
てか、ブスって、……意外と可愛い人いるし。
兄貴と朔で層が違うのは、あれか、美人な兄貴とカッコいい朔だからなんだろうな、うん。

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[mokuji]

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