この学校は、鎖の森からそう遠くない場所に建てられている。
鎖の森とは、悪鬼を封じる牢屋のような場所だ。
森には、生まれた悪鬼を吸い寄せる仕掛けが施されていて、集まった悪鬼が森の外に出ないように結界が結ばれている。

国家の対魔師や退治屋たちが、森に集まってくる悪鬼を始末しているけど、悪鬼は次から次に現れる。
人間の欲望や情念などが悪鬼を作ると言われているから、人間がいなくならない限り、悪鬼は消滅しないんだろう。



今日は、悪鬼退治の実戦を見学する日だった。
先輩たちが、森の外側に集まる、比較的レベルの低い悪鬼を退治する。
もちろん、派遣された対魔師の元で行われるので、万が一のことがあった場合、彼らが守ってくれるようだ。

「うあぁぁあん楽しみー!!」

隣でおかしな声をあげているのは、唯一俺に話しかけてくれる美少年、高社君だ。
たかやしろって、俺でも聞いたことがある。そこそこ力のある退治屋一族だったはずだ。

そんな高社君のテンションは上がりっぱなしで、大きな目をキラキラさせている。

「会長様や、開東様の勇姿が見られるなんて、ここに通っててほんと良かったよ!」
「へぇ」
「へぇって、真緒君は見慣れてるから有難みがわからかないんだろうね。まったくもう贅沢なんだからっ。会長様の技を見たって、君が修得できるとは思えないし、なんて勿体ないんだろう」
「まあ、そうだよなぁ」

俺は、前方に立つ兄貴と朔を見た。

なぜか、俺が兄貴と腹違いだとか、一応これでも本家の生まれなのに、俺は末端の分家筋だっていう噂が流れている。高社君情報だけど。
どうやら、兄貴と俺の力の差に、本物の兄弟だとは思えないらしい。

力があれば、他の人が持っている能力もだいたい把握できる。
熟練者や、相当な能力を持っていれば、相手に自分の力を誤魔化したりもする。でも、この学校の生徒にそんな能力者なんかいないから、みんなは自分の読み取った結果を信じているんだろうな。
能力重視だから、上下関係を見極める手段にしてるみたいだ。

ってことで、俺は底辺……とまではいってないと思うけど、兄貴とは兄弟として相応しくないって思われたらしい。

「ほらほら、もっとよく見えるとこに行くよ」

そう言って、高社君は俺の腕を引っ張って行く。

今日は、三年と一年が鎖の森の近くに来ていた。
一年には実戦初心者がいるから、退魔師や先生たちより後方にいる。高社君は、ギリギリまで近くに行って見学したいみたいだ。

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