4それから、兄貴はなかなか目を覚まさず、校医に帰れって言われてしまったので、俺は一人で自室に戻った。
朔は送るってうるさかったけど、俺はもう朔に甘えちゃダメだって思ったから固辞した。ムカつく外国人にもバカにされたくなかったし。
それで結局、兄貴と挨拶することもないまま、入学式を迎えることになったのだった。
その入学式で一番驚いたのは、兄貴が生徒会長で、朔が副会長だったってことだ。
壇上で挨拶する兄貴は、顔色も戻っていて安心したけど、相変わらずの美形っぷりに、まわりの生徒たちは見惚れているみたいだった。
兄貴と副会長の朔が並んでいる姿だって、絵に描いたみたいにいい雰囲気だったし、朔が兄貴をエスコートしている場面では、生徒が騒ついてしまって先生に注意されるほどだった。
兄貴も朔も、遠い存在になってしまったんだなって気がする。
同じ学校に来れば、前みたいにずっと一緒にいられるって思ってたんだけど。
「……はぁ」
教室でも溜め息しか出てこない。入学したばっかりだっていうのに、気分が暗くなる一方だ。
教科書をまとめていると、周囲から楽しそうな会話が聞こえてくる。
みんな楽しそう。
どうしてか、俺がみんなに話しかけてもおざなりな返事しかもらえなかったり、早く会話を終わらせたいのが見え見えなんだよな。
俺、何かしたっけ? まさか、田舎者には近づきたくない、とか……?
新しい友達ができるってのも楽しみにしてたんだけど。
兄貴たちも忙しそうだし。
もしかして、俺ってここにいるより、じいちゃん家に帰った方がいい?
「はぁ……」
「二回目」
「えっ」
「盛大なため息だねぇ」
もっ、もしかして、俺に話しかけてくれてる!?
隣を見ると、笑顔の美少女が俺を見ていた。
いやまて、ここは男子校だ。
てか、黒目がでかくて、髪サラサラで肌ツルツルで、ほっぺたはほんのりピンクとか……つまんでみてぇ……。
「あんま馴染めない感じ?」
美少年にストレートに聞かれて、返事に困る。
俺は馴染む気はめいいっぱいあるんだけど、すべて跳ね返ってくるんだよね。
「まあ、持ち上がり組がほとんどだし、しょうがないよね」
「そうだったのか!」
「え、知らなかったの?」
「忘れてただけだよ」
そう言えばそうだよなぁ。
兄貴と朔も中学からここに通ってたんだもんな。
「出来上がってるグループには入り込みにくいよね。もともと保守的な雰囲気だし、この学校」
それってどこの女子校だよ。
俺の愉快な友達連中とは違うな。
ってことは、俺とも合わないんだろうなぁ。きっとそうだよなぁ。
「それに、開東様と歩いてたのも原因かもね」
「は!? なんだそれ?」
美少年の言葉に、唖然としてしまった。
開東様!? 様ってなに!? これがヒエラルキーってやつなのか!?
しかも、朔と歩くと友達が出来ないって、どんな呪い!?
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