カラムが二人が去って行った方向を見ていると、少年の亡骸のそばにいたモリヴェロ爵に呼ばれた。
さっきまでの困り果てた表情とは変わり、どこか憮然とした様子のモリヴェロ爵は珍しい。

「彼の身元を調べてくれないか? 実はな、この子、ノアの知り合いだったみたいなんだよ。何の目的でノアに近づいてたんだか」
「そうだったんですか? それでユリエル様とノアはどこへ行ったんです?」
「ああ。ちょっとノアの気分が悪くなったみたいで、帰らせてしまった」
「そうですか」

過保護なモリヴェロ爵に、心底呆れ果てた。
どこまでノアを囲って守れば気が済むのだろうか。
こんな仕事をしていれば、身内が敵になることだってあり得るのだ。
少しは痛い目を見たほうが、本人の為になるのに、そのチャンスをわざわざ潰しているようにしか見えない。

そうこう考えながらも、カラムは言われた仕事をこなしていた。
当然少年が身元を判明できるものなど持っているはずもなく、まずは銃の出所を調査することにした。

銃を調べると、いくつか疑問点が浮かんだ。
少年は本当にモリヴェロ爵を狙撃するつもりだったのだろうか。
フリントロック銃は比較的高価なものだ。バックにいるのは、叛乱組織ではなかったのか、それとも何かの陽動だったのか。

銃の裏ルートに詳しい伝手をたどるため、カラムは場所を移動することにした。
今回、話しを聞きたい相手は連絡手段を持たず、場所を転々としているため、宿場など宿泊施設を調べなければならない。
直接行っても偽名を使っているので、そこにいるという合図を確認するのだ。


とある旅籠屋を訪れると、カラムは見覚えのある馬を見つけた。
騎士団の装飾類は外されているものの、豊かな黒毛のしなやかな馬は、先ほどユリエル達が乗っていったはずの馬だった。

ただそこに馬が繋がれていただけなら、カラムも大して疑問にも思わずに、気分の悪かったノアを休ませるためだったのだろうと考えたはずだ。
他の馬達から離れた場所で、ひっそりと隠れるように繋がれていなければ。
そして、今日の事件現場からすれば、ここは騎士団の寄宿舎とは方向が違っていたのだった。

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