「桃井さつきよ、そなたが泉に落としたのは(表)黒子テツヤ写真集か?それとも(裏)黒子テツヤ写真集か?」 「え?テツ君の写真ならなんだって欲しいけど。……あの、念のため聞きますが、(裏)って何ですか?」 「そなたも可愛い顔して好き者じゃのう。それはわらわの口からは言えぬ」 「え。言えない位の裏レベル?テツ君の××な写真とか▲▲な写真って!?で、でも天使みたいなテツ君のそんな姿っ……。べ、別に見たいなんて思ってなんかっ」 「そうか、では(表)黒子テツヤ写真集を……」 「ちょ、待って!シンキングタイムください!」 「わかった。ではまた明日、参る。ちゃんと決めておくように」 「え、待って!本当にまた来てくれるんですか?」 「これ、服を引っ張るな!必ず参る」 食い気味に詰め寄った瞬間に桃井は夢から目覚めていた。 (大ちゃんが言ってた夢、本当だったんだ) 愛しの黒子テツヤの写真集だけでもお宝なのに更に(裏)写真集とか。マジ欲しい。桃井は禿げる程に悩んでいた。 「でもあんなストイックで可愛いくて天使で男前なテツ君の(裏)なんて見たら……バチが当たるかも」 「なんだよさつき。さっきから裏裏って。まさか裏AV見てぇのかよ。虹村さんなら入手可能かもしんねぇぞ」 「そうなんだ。ちょっと今からお願いしてこようかな……って!見たいわけないでしょ!」 「桃っち、なんかあったんスか?なんか悩んでる?」 「……きーちゃん」 飲みかけペットボトルをファンにこっそり売ったのをちょっぴり後悔しそうな位に、黄瀬は心配そうに聞いてきた。 「あの、ね。こないだ大ちゃんが言ってたじゃない。マイちゃんの(裏)写真集がどうとか」 「お前のせいでゲット出来なかったけどな」 「まさか桃っち、あの謎の女神様が夢に出てきた?」 「あー……えと、その。うん、出てきた」 「マジかよ」 「べ、別に見たいわけじゃないわよ?でも(裏)ってどの程度なのかなーって」 「てか誰の写真集だよ」 ギクリ。出来るだけ動揺を隠し、意味もなくスマホを取り出して誤魔化していた。昼食後で眠くなったのか青峰はコンクリートの上もなんのその、昼寝に突入している。 「桃っち、写真集って黒子っちでしょ」 「なんでわかるの?」 「なんとなく。青峰っちもそうだったから、多分今、一番好きな人の写真集をその女神様は用意してんじゃねっスか」 「そっか。でも、私、女の子なのにダメだよね。大好きなテツ君の××な写真とか▲▲な写真を見たいなんて思ってるの」 「あー、えと、ダメってことはないかと。オレのファンの子で裸を写メらせて欲しい!なんて子が結構いるし。年頃の女の子の好奇心ってやつ?」 「きーちゃんのセミヌード、高値だろうな」 「え。桃っち、盗撮は止めて?」 「しないわよ。するならテツ君を、」 と思わず口にしそうになり慌てて手で唇を塞いでいた。 「きっとテツ君に知られたら嫌われちゃうよね。やっぱり(表)写真集を貰おうかな」 とか言いながらも未だに悩んでしまう。あの黒子のレアな写真が(裏)写真集に載っているのかも知れないのだから。 「テツ君の寝顔とか、壁ドンとか、テツ君が着替えてて靴下がちょっとズレちゃったとことか、ハリポタのコスプレとか。……まさかのキス顔とかっ!ヤバい欲しい!くれください!」 「桃っち落ち着いて!」 「どうしよう。テツ君へのLOVEが止まらない!」 若干ひき気味ながらも黄瀬はその後も、桃井と一緒に色々と考えてくれたが、なかなか結論には至らない。 「桃井」 「あ、緑間っち」 「みどりん、屋上に来るなんて珍しいね」 「話は全て聞かせて貰ったのだよ」 え、盗み聞き?とは言えない程に緑間は真剣な顔をしている。黒子や赤司並みにストイックな男だ。これは説教されるかも、と怯えていると彼は意外な事を話し始める。 「(裏)がどの程度のものかは俺には解らないが。桃井、素直に欲しい物を貰うべきだ」 「え。みどりん、どうしたの」 「お前は普段からマネージャーとして常に人事を尽くしている。そんな桃井への贈り物だと思うのだよ」 「緑間っち。なんか優しい」 多分きっと緑間は(裏)の意味を理解していない。黒子の後ろ姿の写真とか足の裏の写真と勘違いしてそうだと黄瀬は思っていた。 「みどりん、ありがとう。私……勇気を出してみる」 「フン……大袈裟な奴だ」 「ゲット出来たら、みどりんにもちょっとだけ見せてあげるね」 「遠慮しておくのだよ」 ちょっと良い話みたいな雰囲気だが内容は黒子の(裏)写真集をゲットしようという、割りとしょうもない内容だし、桃井が本気で感動している中で青峰のいびきが響いてうるさかった。 教室に戻り午後の授業を受ける桃井に猛烈な睡魔が襲いかかっていた。太ももをつねったりしても抗えずに、うとうとと微睡み始めていた。 「あの、私っ、ううう、裏をっ、」 「おい、さつき」 「くださ、」 「起きろって、さつき」 グイッと髪を後ろから引っ張られて桃井は目を覚ましていた。 「大ちゃん酷い!もう少しでテツ君の(裏)写真集が、」 「ほう……裏とは何かな?それよりも先に桃井、この英文を訳して貰おうか?」 「え」 爆睡中に教師に指名されていたらしく、我に返った桃井は一気に羞恥心で赤くなり、具合が悪いと保健室へと走り去っていた。 「大ちゃんのばか」 自分だって青峰のマイちゃん(裏)写真集ゲットを邪魔した癖に、ぶつぶつ愚痴りながら放課後、体育館へと向かっていた。 「桃井さん」 「……テツ君」 朝から頭を悩ませていた本人の登場に呆気に取られていれば、黒子はシンプルにラッピングされた紙袋を差し出している。 「お誕生日、おめでとうございます。これ、ボクからプレゼントです。女の子にプレゼントって、よく解らないのでボクのお薦めの本なんですけど」 すっかり忘れていたが、確かに今日は桃井の誕生日だ。 「テツ君、ありがとう」 裏も表も謎の写真集はゲット出来なかったが大好きな黒子が自分の誕生日を知っていて、お祝いの言葉を言ってくれて、しかもプレゼントまでくれた事に感動して涙ぐんでしまう。 「桃井さん?」 「わ、私……。すごく嬉しくてっ。ごめんね、」 「謝らないでください。プレゼントを気に入って貰えたのなら、ボクも凄く嬉しいです」 「テツ君……男前過ぎ。本当に好き」 「ありがとうございます」 そんな2人を陰から覗き見して、黄瀬もうるうるしていた。 「本当に黒子っち男前っス!桃っち、おめでとっス!」 「テツはまさか、さつきが自分の(裏)写真集を欲しがってたなんて知らねぇからな」 「桃井が幸せに思えたなら、良いのだよ」 「てか俺もさっちんにバースデープレゼント買ってきたし」 「オレだってバッチリっス」 「俺も牡牛座のラッキーアイテムを用意してきた」 「僕もだ。女性へのプレゼントなんてかなり悩んだよ。あんな風に気に入って貰えると良いのだが」 「え。赤司っち。プレゼントって、まさか」 「体育館の側に繋いである小馬じゃねぇよな?」 「綺麗な白馬だろう?名前は桃丸だ」 庶民に馬のプレゼントはないだろうスーパーボンボン主将!そんなツッコミは皆、心中のみで呟いていた。 桃丸は桃井ちゃんが赤司に謝り倒して自宅に連れ帰って貰いました。ちなみに青峰君は料理本をプレゼントしたそうです。 桃井ちゃん遅れたけどhappy birthday! 20140505 |