「来週の練習試合の推しメンを発表する。青峰、緑間、紫原、黄瀬、そして僕、」
(赤司っちが推しメンって言った!)
(俺達は赤司の推しメンかよ。てか奴も入ってるし)
(やはり青峰君がセンターなんでしょうか…。あ、ポジション的なら紫原君?)
メンバーの小さなざわめきに気付かない新しい主将である赤司に桃井が慌てて小さく耳打ちをしていた。
「あ、」
(凄く小さな声で「あ」って言いましたね)
(やっぱ言い間違いだったっス!)
(赤ちん、ちょっと赤くなってるし)
(スタメンと推しメンを言い間違うとは…)
常々ボンボン発言をかます我らが主将は実は天然なのでは、そんなことを練習後に話しているといつの間にか赤司が皆の背後に立っていた。
「皆、お疲れ様」
「え、あ、赤司っち!あの…今からファミレス行くんスけど、良かったら一緒にどうっスか?」
「ファミレス?」
「まさか赤司君…。ファミレス行ったことがないんですか?」
「ああ、」
「マジかよ赤司」
外車で送迎とか爺やがいるとかボンボン伝説が隠しきれない赤司の、予想通りの答えにメンバーは目が点になっている。
爺やに今夜ディナーは済ませて帰ると電話してから、赤司は一緒に駅近くのファミレスへ向かった。
てかディナーって…。
「どうもありがとう。少ないが受け取ってくれ」
「赤司君、店員さんにチップを渡さないで下さい」
席に案内したウェイトレスへナチュラルにチップを渡そうとする赤司に黒子は冷静に突っ込んでいた。
「ほら赤司。メニューを決めるのだよ」
物珍しそうにファミレス内を見回す赤司に緑間がメニューを見せると、キラキラと瞳を輝かせている。
「凄いね…!カロリー表示がしてある」
「驚くのはそこっスか」
「あー、腹減った」
「俺も腹ペコだしー」
各々、中学生男子らしいボリューム溢れるメニューを注文すると、赤司は眉間にシワを刻んでいた。
「こらこら皆、野菜が足りていないぞ。サラダを3つ頼もう。桃井もマネージャーなんだから気付かないと」
「「「女子か!!」」」
「なんか、ごめんなさい」
「桃井さん、謝らなくてもいいですよ」
「うえー。葉っぱなんか食いたくねぇな」
「確かに栄養バランスは大切だな、それで赤司は何を頼むのだよ」
「…湯豆腐も湯葉もないのか。困ったな」
「「「じいちゃんか!!」」」
青峰と敬語の抜けた黄瀬と黒子の二度目のツッコミをスルーして真剣にメニューを眺める赤司。
和食御膳という地味なメニューを頼むと席を立つメンバーを不思議そうに見上げた。
「赤ちん、ドリンク取りに行くよ」
「え?」
「好きなのを選べるっスよ」
「僕が自ら、行かねばならないのか?」
「当然なのだよ」
渋々ドリンクバーまで着いて行った赤司は再び瞳をキラキラと煌めかせる。
「自分でドリンクを注ぐのか?これは面白そうだ」
「面白いっつーか…。まぁ、いいや。早く選べ赤司」
「ボク、テツヤmixにします」
「黒子っちはそれ好きっスね。オリジナルジュース」
「テツヤ…!牛乳に白桃ジュースを混ぜたりして大丈夫かい?」
「問題ナッシングです」
「赤司っち、なんか混んできたんで早く選んで欲しいっス」
「ああ…。じゃあホットの紅茶を…熱っ!!」
「ちょ、赤司ーっち!危なっ」
「赤ちん、自分の手にお湯かかってるし」
「ああ、危うく火傷するところだった。皆も気を付けろ」
「誰も自分の手にお湯かけねぇよ」
「てかこのクソ暑いのにホットは飲まないっスよ」
呆れながらも慎重に紅茶をカップに注ぐ赤司を見守り、やっと席に戻った。
茶葉の香りが薄い、と愚痴るのもボンボン臭いが次の瞬間には、黒子が手にしたテツヤmixをじっと見つめている。
「あの…飲みたいんですか?赤司君」
「いや、別に。ただどうしても牛乳と白桃ジュースを混ぜたというのが気になって」
「飲みたいんですね。良かったらまだ口は付けてないので一口どうぞ」
「テツヤ…」
「美味しいですよ」
「良いのかい?」
「はい」
「じゃあ、一緒に飲もう」
「え?」
ストローをもう一本コップに挿し込み黒子に微笑みかける。
「さぁ、同時に飲もうか」
「いえ、あの…。バカップルじゃないんですから。そして甘えたような顔がムカつきますちょっと可愛いと思ったじゃないですか」
「テツヤ、ほら早く」
「あ、はい」
結局促されて赤司と一緒にテツヤmixをストローで吸い込んでいた。
「美味しいね、テツヤ」
「無駄に良い笑顔をボクに向けないで下さいなんか変な気分になるじゃないですかボクをどうしたいんですか」
「なんかあの男の子達、可愛いー!」
周りの席の女の子達からの視線に耐えきれずに、2人を残してドリンクバーに立ち去るメンバー。
「赤ちんて天然だよねー」
「しかも天然タラシっぽいと思うの。私もテツ君と一緒にメロンソーダ飲みたかったー!でもしっかり写メったんだから」
「さつき、お前テツのストローパクるつもり…がふっ!(桃パンチ)」
「でも赤司っち、楽しそう。ファミレス誘って良かったっスね」
「…お汁粉がないのだよ」
「緑間、まだここにいたのかよ?」
デザートに白玉ぜんざいがあったと黄瀬に言われて渋々と緑間は席に戻った。
何故二人きりにしたんだと帰り道で青峰と黄瀬は、黒子にイグナイトを喰らわせられたという。
20130525
20130529修正
20130915再修正
黒子っちは炭酸苦手なんですね…。可愛いっ。
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