本日は我らがキャプテン、赤司征十郎の誕生日である。
体育館はメンテナンスの為に使用出来ずに、誕生日を祝うには都合が良かった。
放課後はみんなでファミレスでお祝いでもするかと話していたが、昼休みに赤司から緊急招集がかかり屋上へと集まる。
「みんな、急に悪いな。食べながら聞いてくれ」
それぞれが弁当箱を開けて食べ始めると赤司は話を始めた。
「実は今日、桃井が僕の為にバースデーケーキを焼いてくれるらしい」
「「「「「え」」」」」
「せっかく作ってくれると言うので断れなくてな」
「赤司君……。まさか食べるつもりですか?」
「ああ、当然だ」
「家に持って帰ってから食べるって言えば?赤ちん」
「それが良いのだよ」
マネージャーとしては有能だが料理の腕は壊滅的なのだ。
「うーん……。6人で分けて食べればいいんじゃないスか?」
「1人で丸ごとよりはマシかもな」
「いや、みんなを危険な目には遇わせられない」
「あ、いい事思いついたっス。ふざけたふりして、赤司っちの背中を押してケーキに顔から突っ込むとか!」
「あれー、これじゃ食べれないじゃん、みたいな?」
「ケーキはみんなの悪ノリで潰れたが持って帰って食べるか、という流れはどうだ?」
「いいんじゃねぇか、それで」
「食べ物を粗末にするのは気が引けるが……持って帰るならいいだろうか。じいやがとても心配していてね」
「じいやさんを悲しませたらダメですよ、赤司君」
「何よりも赤司の身体が心配なのだよ」
「じゃあ、細かい作戦を考えるっス!」
そんな訳でみんなで放課後の計画を綿密に立てている内に昼休みは終わっていた。
そして放課後。
「赤司っちハッピーバースデー!」
部室で黄瀬の掛け声を合図にクラッカーを鳴らせば誕生日らしいムードに包まれる。
暫くすると青峰が朝から家庭科室で仕込みをしていた桃井から携帯で呼び出されて一緒にケーキを持って来た。
「赤司君、お待たせ!お誕生日おめでとう!あのね、みんなの分も焼いてきちゃった!いっぱい食べてね」
「「「「「え」」」」」
作っちゃったー!!
みんなの心の叫びは勿論桃井には聞こえずにテーブルの上に次々とケーキらしき物体を乗せてゆく。
全員のイメージカラーで作ったのか、カラフル極まりないケーキだった。
「おい、さつき。お前の分はねぇのかよ」
「私、ダイエット中なの」
「ふざけんな!」
「なんで怒るの?あ、赤司君のケーキだけロウソク立てるね」
部室の灯りを消してから、えい、と赤黒いケーキにロウソクを立ててライターで火を点ける。
「桃井、ありがとう。しかし……このロウソクは?」
「え?ああ、可愛いロウソク買うの忘れてて、家の仏壇から持ってきたの」
薄暗い部室に灯る白く太いロウソクは何だかこれから怪談でも始めそうな雰囲気だ。
「……緑色のケーキなんて初めて見たのだよ」
「みどりんのはワサビで色を付けたの」
よりによって何故にワサビ!?抹茶とか他にあるだろう!とは突っ込めなかった。
「きーちゃんのはカラシだよ」
「痛い痛い!既に目が痛いっス!」
「……俺もなのだよ」
当初の計画では黄瀬がふざけて赤司を押す→赤司ケーキに顔から突っ込む→あららーまぁでも誕生日だから無礼講!→僕は持って帰ってから大切に食べるよ、の流れだった。
どうすればいいのか……。みんなが真っ青になる中で桃井は明るい笑顔で言った。
「テツ君のケーキ、一番張り切っちゃった」
「……桃井さん、ありがとうございます」
「やだ、照れちゃうー」
「あ、」
トン、と軽く背中を叩いたつもりだったが、ベビーブルーの怪しいケーキを前に、心身喪失気味だった黒子はぐらりと前のめりになる。
「やべ、テツが顔からいった!」
「え、黒子っち大丈夫?……って、うわ、」
カラシで涙が止まらない黄瀬は足元がよろけて真っ黄色のケーキへ顔からダイブしていた。
「やだー!きーちゃんがケーキと一体化してる!」
「バカが……。だからお前はダメなのだ、よ!?」
眼鏡を外して涙を拭いていた緑間はケーキから顔を上げた黄瀬から垂れたクリームを踏んで滑り、ベシャリとワサビケーキに顔から倒れこむ。
「あーあ。間抜けだな、お前ら」
「青峰君。ここまできたら、お約束ですよ」
「は?うわあっ!」
黒子に後頭部を押さえられてケーキに顔を沈める青峰。
そんな悲惨な光景を見ながら紫原と赤司は顔を見合わせる。
「赤ちん……」
「アツシ……」
「お前らもやるに決まってんだろうが!」
「赤司君、ハッピーバースデー!」
顔から肩までクリームまみれの青峰と黒子に押されて残る2人もケーキに顔を埋めていた。
「めっちゃ目が痛いけど、盛り上がるっスね!」
「なんか俺ら芸人みたいだし〜」
「ボクのケーキ、ラムネ味なんですね。桃井さん」
「顔中がピリピリするが。味はともかく、6個もケーキを焼くのは大変だったろう。桃井、お疲れだったのだよ」
「こんなおふざけも中学生ならではかも知れないな。桃井、本当にありがとう」
「そんな……。いいんだよ、別にお礼なんて。じゃあ、そろそろ食べようか?私、紅茶淹れるね」
「「「「「「え」」」」」」
全員ケーキをお持ち帰りして誤魔化すつもりだったのに、まさかの展開。
潰れたケーキはキセキの皆さんと黒子でちゃんと完食しました。
赤司君、happy birthday!
翌日学校を休んで病院へ行ったキセキと黒子は待ち合い室で顔を合わせました。
20131219
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