「なんだよ、黄瀬の癖に休みか。生意気な」
「黄瀬君の癖に風邪をひいて寝込んでるらしいですよ」
「涼太の癖に練習をサボるだなんて許せないな。登校して来たら三倍やらせないと」
何時も通りの雑な扱いではあるが皆、黄瀬不在を何となく物足りなく感じていた。
「俺、せっかく黄瀬ちんにまいう棒詰め合わせ持ってきたのになー」
「敦が人におやつをあげるだなんて珍しいね」
「んー。黄瀬ちんって何時も地方限定のお菓子買ってきてくれるから、たまにはお返ししようと思って」
「きーちゃん、私にも仕事で貰った化粧品サンプルをくれるんだよね」
「俺もブランドのコラボ限定バッシュを貰ったな」
「ボクも好きな作家さんのサイン入りの初版本を貰いました」
「俺もラッキーアイテムのフェ○ーリを以前、借りてきて貰ったのだよ」
「僕も爺やが探していたアンティークのカフスボタンを涼太に貰ったことがあったな」
別に媚びる訳でもなく黄瀬はプレゼントするのが好きで、見返りは求めずに「探してたっスよね」「好きそうだから」と気軽にくれるのだ。
「いやー、惜しい奴を亡くしたな」
「青峰君、黄瀬君に止めを差すのはボクの役目です。残念ながらまだ生きてます」
「んもー、不吉な言い方止めてよ。それにしても、きーちゃんて本当にマメよね」
「世話好きだしな、俺らには」
「彼女が出来たらウザい程に尽くすタイプかも知れないですね」
「居ないのがおかしいけど…。実は秘密の彼女が居て、今日もお見舞いに行ってたりして」
「それはねぇだろ、寂しくて一人でヌいてんじゃねぇのか」
「大ちゃん、最低っ」
「んだよ、テツだってヌいてんぞ?さつき、あんまし男に夢を見ない方がいいぞ」
「桃井さん、すみません」
「いやぁーっ!テツ君、謝らないで!」
「しかし黄瀬は大丈夫か?まさか自宅でポックリ、だなんて後味悪いのだよ」
「人気モデル黄瀬涼太、一人暮らしのマンションで孤独死!なんて記事は読みたくねぇな」
「中学生ってお香典渡すものなんですか?ボク、今月ピンチなんですけど」
「それはバスケ部でまとめて渡すんじゃないか?黒子」
「黄瀬ちん、香典代わりがまいう棒だったら怒るかな?」
「黄瀬も童貞のまま死ぬなんて心残りだったろうな」
「棺にはエロ本を入れてあげましょう」
「涼太が不在でツッコミが居ないから一応僕がツッコむよ。皆、涼太はまだ生きている。さっき生存確認のメールが来た」
「きーちゃん、ちゃんと食べてるかな?」
「取り敢えずミネラルウォーターだけは、アホみたいにキープしてんじゃね?」
「ボク、家に一人だと出前も取らないと聞いたことがあります」
「黄瀬ちんが自分で料理するかなー?」
190センチ近い大男が背中を丸めてお粥を煮込む哀しい姿を想像して皆、何とも複雑な気分だった。
「仕方ねぇな、見舞いに行ってやるか」
「黄瀬君、引っ越したんですよね、確か」
「んだよ、セレブなモデル様は金持ってんな」
「夏休みに青峰と黒子が黄瀬の部屋で打ち上げ花火やバーベキューをして、住民から苦情が出たので引っ越しを余儀無くしたのだよ」
「そうでしたっけ」
「いやー火災報知器って、あんなに反応早いんだな」
「テツヤと大輝はやんちゃだね」
「黄瀬ちん、そんな汚れ芸人みたいな酷い目に遭ってたら、引っ越し先教えないんじゃない?」
「俺なら教えないのだよ」
「まぁ、涼太に聞いてみるよ。……え、涼太、早っ!」
『赤司っちぃ〜、オレ寂しくて死にそうっス!』
赤司君からの着信にワンコールで飛び付いた黄瀬君に一同はドン引きしました。
地味に続く!
20130113
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