蜂蜜色のお月様がとってもおいしそうな夜のことでした


やっとこマンションにたどり着き、リビングのソファーにへたり込んだ花音は脱力しきっていた。


「花音さん、お疲れ様。それから……お帰りなさい」

「ん……。ただいま、涼太君」

「もう、絶対に離さないから」

「うん」

ぎゅうっと抱き締められて苦しい位だったが、服越しに伝わる体温や黄瀬から香る爽やかな匂いにも幸せを感じる。


「取り敢えず着替えてお茶飲もうか?」

「……もうちょっと花音さんを堪能してたいっス」

ぐりぐりと肩に頭を擦り付けられてくすぐったいと身を捩るも、黄瀬の力に敵うはずもなく広い背中をポンポンと撫でてやった。


「涼太君、子供みたい」

「……子供じゃないっスよ。って、それはベッドの中でたっぷりと教えてあげる」

「え……。え?」

「まだ籍は入れてないけど。もうオレ達、お互いに好きあってる訳だし」

ね?と耳たぶに生暖かい息を吹き掛けられて、ビクンと身体が震えてしまう。


「ちなみに社長にも花音さんと結婚すんの認めさせたから」

花音の知らないところで黄瀬は色々と外堀を埋めていて、自分はお伽噺のお姫様みたいに、ただ王子様を待っていたようで情けなくなってきた。


「真面目に人と向き合うってめんどくさいけど、花音さんと一緒にいられるならオレ、何でも出来る気がするし、強くなれそう」

「私もだよ。涼太君が一緒なら、強くなれる。でも私、男の人と付き合った事ないし、考え方とか重いと思う」

「マジでバージンだったんスね」

「……うん。重いよね?色々と」

「なんで?オレ、すげー嬉しいし興奮する」

「ばか」

「ばかみたく、花音さんに夢中っス」

照れたように笑う黄瀬の言葉も今なら信じられると、彼の手に自分のを重ねていた。


「涼太君、ありがとう。藤白屋もお父さんも、私も……涼太君のお陰で救われたよ」

「オレに出来る事で助けられて良かった。でも藤白屋の経営状態がアップするかはまだ、正直わかんないし。花音さんのお父さんにも頑張って貰わないと」

クリスマス前の12月から黄瀬がイメージモデルを務めるブランドは藤白屋にオープンする。それから年度末までの売上が今後の経営を左右するに違いない。


「今夜は涼太君の好きなご飯を作るね。それから……あの、私の初めてを奪って下さい」

「え」

「私、初めてで上手く出来ないと思うけど、頑張るから!」

「……頑張るって、」

ぷはっ!と思わず吹き出すと花音はムッとしていて、黄瀬はそんな生真面目な発言さえも可愛いなんて思っていた。


「そんな可愛い事言って、オレをどうするつもり?もう、ご飯もお風呂もすっ飛ばして花音さんをメチャクチャ抱きたいんスけど!」

「……っ!?涼太君のえっち。ご飯、何にする?」

「ハニーが作るなら何でも美味しく頂きます」

「ダーリンの好きなものを作りたいの」

「……うわ、新婚さんって感じっスね!じゃ、ハンバーグで。あと、」

「オニオングラタンスープ、でしょ?」

「当たり」

キッチンに立つ花音の後ろに張り付いて新婚ごっこを堪能しているとインターホンが鳴り、氷室と黒子と火神が部屋に乱入して黄瀬が半狂乱になるまであと10分。


Happy end!
20140419


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