《Hard Candy 〜Extra》 #Extra_初めて:02 その話を由佳にすると、お弁当を食べる箸を咥えたまま、ポカンと動きを止めてしまった。 「それ…」 箸を置いて、笑いながらため息をつく。 「もーのすっごい昭和なナンパの台詞だよねぇ」 昔の映画で見たことあるわ、と、じわじわ笑い声を大きくする。 「やっ…ぷくくく…、ちょ、ダメ、あははははははは! 時間判る、って、何時代なの! いやー! 苦しい! あはははははははは!」 「ねぇ、いくら何でも笑いすぎじゃ…」 「ごめ…、っくくくくく。いいなぁ、澪、そんな出会い」 いい、なんて思ってないくせに。 「時間訊かれただけだもん」 「ごめんごめん。カッコよかった? どんな人?」 シャツのボタンを2つか3つくらい外して、一見着崩しているように見える制服は、それでも清潔感があった。 背が高いからか、見下ろされてはいたけど、嫌な感じはしなかった。 恐面なのに、笑った顔は、どこか幼くすら見えて。 「同い年、ではないような…」 「ふぅん? どこの制服?」 「北高…、かな」 「んっふふー。“またね”があるといいねぇ」 なんて。 他愛のない、ランチの会話で終わるはずだったのに。 “またね”は、意外とすぐにきた。 [*]prev | next[#] bookmark |