《Hard Candy 〜Extra》
#Extra_樅の木:02




 ギラついたナンパに泣いたりして。


 ――男が寄ってきてウザい


 俺の顔見て、安心しきって。


 ――そうなったら、柾木くんが助けてくれるんでしょう?


 俺だってナンパだったのに。
 そんな澪を、裏切れるかよ。


 ――俺が助けんのは俺の女だけ


 そう。

 澪は、俺の女、だから。

 俺が助けてやんねぇと。


 澪は笑ってんのがいいんだ。








 クリスマスなんて、仏教徒のふりした無信仰な日本人には、ヤるための口実でしかない。

 夜になれば、あっちでもそっちでも欲望が渦巻いてる。


「今日、さ」


 待ち合わせた喫茶店、澪が紅茶を掻き回す。


「飯以外、外な」

「…寒いよ? 今日」


 や、判ってんだそれは。そういうことじゃなくて。


「うん、寒いんだけどさ、」


 まさか俺がなー。

 女相手にこんなんなるとは思わなかった。


「ありきたりだけど、ちょい遠出しようぜ」


 寒いから外はやだ、とか、絶対言うなよ。

 お前のためを思って言ってんだから。

 こんな日に室内ふたりきり、とかなってみろ。

 十中八九、俺は流される自信がある。健全な高校生の性欲ナメんなよ。

 俺にだって我慢にも限度があんだよ。




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