《恋愛初心者》 #01_好きじゃない彼氏:04 じゃあね、と、あたしの肩を叩くと、結衣子はスキップでもしそうな勢いで、江坂くんのいる教室に向かって行った。 それが、結衣子の言う、付き合っても損はない、ってことなの? 好きじゃなくても、エッチできて、相性がよければそれでいいの? ねぇ、違う。 違うと思うよ、結衣子。 早いとか遅いとか、そういうんじゃなくて。 誰とも付き合ったことがないあたしに、言われたくないかもしれないけど。 あたしが言いたいのは、そんなことじゃなくて。 だって、そんなの、ヤだよ。 百歩譲って結衣子はそれでよくても、あたしは絶対にそんなのはイヤだ。 ねぇ、結衣子。 付き合うって、そういうことなの? 傍にいるだけでドキドキしたり、幸福な気持ちになれたり、嬉しいことも悲しいことも半分こにできたり。 そういうの、結衣子にはないの? あたし、間違ってるのかな。 結衣子には悪いけど、何となく江坂くんが気の毒になってしまった。 別に、あたしが江坂くんを好きだとか、そういうんじゃないけど。 江坂くんが結衣子を好きで、結衣子と江坂くんが付き合っている以上は、結衣子にも江坂くんを好きでいてほしい。 そう思うのは、大きなお世話なんだろうか。 「弾けてんなぁ、中津」 結衣子と入れ違うように教室に戻ってきた三国くんが、廊下に首を向けたまま、ひとり言のように呟きながら、肩を揺らした。 廊下からは、結衣子の笑い声が聞こえてくる。 「中津、江坂と結構ヨロしくしてるらしいじゃん?」 [*]prev | next[#] book_top |