《恋愛初心者》
#03_これからのふたり:01



 案の定、というと、失礼なのかもしれないけれど、江坂くんの“結衣子の彼氏歴”レコードは、四ヶ月を目前にして、ついにストップした。

 結衣子曰く『相性よかったけどマンネリなのよね』という、素気ない理由で。



 あたしと江坂くんは、これまで何の接点もなく、江坂くんにしてみたら“彼女の友だち”でしかなかったけれど。

 それが今では“元カノの友だち”になり、“友だちが好きな女”になっている。


「――で、どうなの、三国」


 結衣子と付き合っているときは、江坂くんと話すことなんてほとんどなかったのに。

 何故か別れてから、江坂くんと話すことが多くなった。


「どう、っていうか…」

「あいつ、いい奴だよ」


 というのも、あたしが通っている塾に、江坂くんも通い始めたからで。

 塾が終わってからの時間、よくお茶に誘われる。


「…うん」


 もっとも、お茶、は名目でしかなくて、途中編入した江坂くんは、これまでのあたしのノートが目的。

『堂島に何かしたら三国に半殺しにされるから安心して』と笑う江坂くんは、まだ少し、寂しそうだ。


「あ、そこ違うよ。そこにx=2aを代入すると、yの座標が簡単に出せるの」

「おぉ、そっかそっか」


 いつものファストフード。

 いつもの窓際の席。

 そして、そろそろ。


「…あ」


 ポケットの中で、携帯が震える。


「来た? お迎えメール」


 ノートを写しながら江坂くんは顔も上げずに言うけれど、ペン先を追う目元はいつもからかうような色を浮かべていた。


「もう…。やめてよねその言い方」




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