《はつこい》
#02_自業自得:02



 三井が『部活を辞めたい』と言い出すまで、俺は何の悩みもなく平々凡々に過ごしていた。

 ちょくちょく、告られたりはしたものの、俺の何を知ってんだ、って思って、適当に丁重にお断りなんかしてみたりして。

 それなりに人並みの青春を謳歌しつつ、毎日が部活中心で楽しくやっていた。

 なのに――。


「…何で、辞めんの?」


 普通に沸き起こる疑問を口にする。

 そりゃ、一応訊くよ。俺、部長だし。理由もなく辞めるだなんて、なぁ。


「お前、さ」


 軽く舌打ちまでされて、イラついた目をした三井は、ポケットに両手を突っ込んだ。


「何」

「…真由子と付き合ってんのって、ホントなの?」

「は?」


 俺が訊いたのは、部活を辞めたい理由であって、二年になってからまことしやかに流れてる噂の話じゃない。

 何だってみんな、俺と真由子をそういう仲に仕立てあげようとするんだろう。


「それ、部活辞めんのと関係あんの?」

「あるから訊いてんの」

「…」


 真由子、は。

 好きな音楽も似てて、話も合うし、サバサバしてるから甘ったるい猫撫で声を出す女たちと違って一緒にいて気が楽。

 ただ、それだけ。

 …の、はずだった。


「付き合ってねぇんなら、何で噂、否定しねぇの?」


 三井のキツい視線は、俺を責める。

 その噂がどれだけ真由子を苦しめてるかなんて、知らなかったのは、俺だけだったらしい。


「見てらんねぇんだよ」

「だから、何を」

「あいつ、相当嫌がらせされてんだぜ? お前と噂んなってから」


 真由子はお前に言わねぇだろうけど、と、短く息を吐く。




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