《はつこい》 #02_自業自得:01 夜中に書くラブレターは、次の日読むと恥ずかしいもんなんだ。 …って、誰かが言ってた。 言ってたんだったか、マンガか何かで読んだのかは忘れたけど、そういうもんか、と思った記憶があるから、どこで知ったかはこの際どうでもいい。 問題は、目の前にある、この水色の便箋一枚。 ラブレター、とするには、違うかもしれない。一言だって甘い言葉は書いてない。 でも、何度も書き直した。 こんなん書いたことねぇし。 読み返すべきかどうか、悩みに悩んで。 四ツ折にしたそれを開くのはやめて、海のレーベルを入れたカセットケースに潔く挟んだ。 ――絶対、家帰るまで、中見ないで キョトン、としてたな、真由子。 そりゃ、文化祭が終わって大分経ってるし、怪訝な顔をするのも致し方ない。 渡したのは、文化祭の演奏をダビングしたものだ、って、真由子はすぐに判ったと思う。 真由子に渡したテープは、他の部員に渡したものと、水色の便箋一枚分、意味が違う。 もっとも、三年生全員に『すぐダビングする』と言っておきながらそうならなかったのは、便箋一枚書くのにそれだけ時間がかかってしまったからで。 もう、真由子は家に帰っただろうか。 もう、水色の便箋を開いただろうか。 [*]prev | next[#] book_top |