《シャンプー》
#01_兄貴代理:08




「お兄ちゃんはお兄ちゃん、でしょ」

「つれないね、お前は」


 くしゃくしゃと頭を撫でて、葉月は弥生ちゃんから離れる。


 …つれないね、か。

 葉月にしてみりゃ、そうだろうな。


「智」


 ネクタイを緩めながら、葉月が意味ありげな視線をよこす。


「お前、もしかして――」

「――その話はまた今度な」


 言いたいことは、判る。

 でも、弥生ちゃんの前で、しかも今する話じゃねぇだろ?


「何の話?」


 椅子を降りた弥生ちゃんが、不思議そうに葉月を見上げる。


「男同士の真剣勝負の話」

「またあたし仲間外れだ」

「それよりも飯食い行こうぜ。走ってきたら腹減った」


 うまく話を逸らして、葉月はコキコキと首を鳴らした。



 とうとう話すときがきたんだな。

 いつかは葉月と正面切って、話さなくてはいけないとは思っていたけど。


 俺が気付いてる、って、葉月が知ったら何て言うだろう。

 まぁ、相手は葉月だからな。

 気付いてることに、気付いてるかもしれない。

 そんなことはどうでもいい、とか言いそうだな。




 けど、容赦しねぇよ?

 俺だってなりふり構ってらんねぇんだ。








- 8 -



[*]prev | next[#]
bookmark



book_top
page total: 29


Copyright(c)2007-2014 Yu Usui
All Rights Reserved.