《Hot Chocolate》
#03_名誉挽回:02



 ――ええ!? うっそだぁ、もらったっしょ?


 あの自信満々な台詞には、そういう裏付けがあったのか。


「顧問の先生彼女いるの? って訊かれたら、誰でも気付く」

「…」

「俺、綿貫と小学校から一緒でさ。ヤナイとワタヌキだから、同じクラスになるといつも席近かったし、なんか話も合うんだよね」


 そうかいそうかい。そりゃよかったな。

 てか、柳井が知ってる、ってのが、個人的に気まずい。


「綿貫、いじらしくてさ。教師と生徒なんてマンガだぞ、って言ったんだけど、転校前の想い出にしたいだけだから、って」


 春休みの部活スケジュールの相談に来ていたはずの柳井は、仮の予定がチラホラ書き込まれたプリントを裏返した。

 それは、本題に入る、という合図。


「…受け取ってもらえたかどうか判んない、とか微妙なこと言うし、かと思えば、こないだからすんげぇ落ちてるし、」


 落ちてる、のは、アレか。

 ノート持って、理科教科室に来たあの日以来、だろう。

 ノートを返却するのに、各クラスの教科担当に取りに来るようHRで伝達してもらったが、二年一組だけは、教科担当ではなく当日の週番が取りに来た。

 しかも週番、柳井だったな。


 まぁ、…うん。

 あのチョコの渡し方が綿貫の精一杯だったんだろうし、その精一杯を無碍にしたのは俺だ。


「あんまり様子おかしかったから、全部聞いたよ」

「――え、」

「聞いた、って言い過ぎだな。喋らせた、が正解」


 だから綿貫は悪くないよ。

 そう言った柳井の口調が、遠回しに俺を責めているような気がした。



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