《Hot Chocolate》
#03_名誉挽回:01



 …まいったなぁ。


 気が重い。

 実に、気が重い。


「内藤先生ー、綿貫まどかの転校先の学年主任さんからお電話です」

「あー、はいはい」


 まったくもって、気が重い。






 自業自得、という四字熟語がある。


「あ、ヤッベ、俺落としてたのか」

「悪い、ちょっと端を汚してしまったんだ」


 まさに、それは俺のことだ。

 少しコーヒーの染みた水色の封筒を柳井に渡せば、江藤には内緒にして、と、肩を竦めた。

 自業自得の引き金となったのは、俺の早とちり、というか、真剣な想いを真剣に受け止めようとしなかったせいだ。

 決して、このメッセージカードじゃない。


「どこにあったの、これ」

「お前のクラスに落ちてたんだよ。綿貫の席の――あ、あのあたりは柳井の席でもあるか」

「綿貫、隣だけど? てか、なんで綿貫が出てくんの」

「あ、いや、」


 ヤバ。

 軽くテンパってんな、俺。


「…もらったっしょ」

「は?」

「や、だから、本命チョコ」

「え?」

「綿貫だよ。あいつ、ちゃんと渡せたんじゃん」

「え、なんで、」

「俺の話してんのに、綿貫の名前が出てくるってことはさ、好きとかはともかく、多少なりとも気にかけてんでしょ?」


 飄々と言ってのける柳井は、水色の封筒で顎をトントン叩きながら、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた。


「なんでお前が知ってんだ、って顔してんねセンセー」

「…そりゃそう思うだろ」

「相談されてたからさー、ずっと。ウチのクラス、俺しかバスケ部いないし」



- 11 -



[*]prev | next[#]
bookmark



book_top
page total: 25


Copyright(c)2007-2014 Yu Usui
All Rights Reserved.