《Before, it's too late.》 #03_男の子、女の子:13 季一先輩と湯島天神に行ってから、半月余り。 カレンダーは十二月になり、あたしは季一先輩の“彼女”になった。 「また食べないの?」 薫子が眉間を寄せる。 あたしは黙って視線で返事をして、テーブルに置いたフォークに目を留めた。 「…ねぇ、」 いい話はしないよ、という表情を隠しもせず、さらに薫子はため息まで追加する。 「ものすごーく今さらなこと、訊いてもいい?」 長い“彼女のフリ”生活に終止符を打ったものの、十二月の季一先輩は多忙だった。 予備校、模試、それから学校で科目や受験大学別の補講授業もあったりして、放課後一緒に帰ることもままならない。 センター試験は来月。“あたし”が受験の邪魔になってはいけない、と、そればかりを気にして。 先週末、季一先輩は夏目先輩と大学の下見に行っていた。 都内の大学だし近場だから一緒に来ればいい、と、季一先輩も夏目先輩も誘ってくれたのだけど、遊びに行くのとは違うのだから、それはお断りした。 寂しくない、といえば、嘘になる。 もやもやした寂寥が、このところずっとあたしにつきまとっていた。 だから元気がないのだ。 食欲も出ない。 薫子にはそう何度も言っているのに、何故か信用してくれない。 また食べない、だなんて、見当違いなことを言ったりする。 おかしなことを訊いてきたりする。 そんなんじゃないのに。 ただ、ちょっとだけ、寂しいだけなのに。 [*]prev | next[#] bookmark |