《Love Songs》
#06_キャンディ:4



 そりゃ、ケンカだってした。

 くだらない行き違いも、何度かあった。

 それでもこうして僕らは続いている。

 遠くない未来を、これから先も、ずっとずっと一緒に過ごしていくつもりなのに。

 大人の一方的な言い分が、ふたりで積み重ねてきた時間を否定するのは、我慢できない。


 だけど僕らは、泣く泣く引き裂かれた。

 当然のように逢わせてはもらえず、電話も、メールも、手紙も、すべてチェックされている気配があった。

 僕には、あからさまな嫌がらせすら、あった。


 そうやって、障害が増えれば増える程、燃え上がるのは、今も昔も変わらない。

 陳腐な三流映画みたいに、ふたりで遠くに逃げようとして、少し離れた駅で待ち合わせて。

 どうやって捜し当てたのか知らないけど、電車に乗る寸前、おじさんの部下だという人に捕まった。

 その人が申し訳なさそうに彼女を車に乗せ、僕に深く頭を下げたのが、忘れられない。

 駆け落ち紛いの逃避行は失敗に終わり、その後の彼女は逐一行動を見張られて、出かけることすらままならなくなった。



 だからこうして、早朝、ひっそりと彼女の部屋に忍び込むしか、逢う手立てがない。

 ロミオとジュリエットより、なお悪い。

 僕には、ロミオのような家柄も地位も、ありはしないのだから。








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