《Love Songs》
#06_キャンディ:3



 同じクラスになって、一目惚れしたのは僕のほう。

 夏休み前に告白して、夏祭りの花火に誘った。

 OKをもらった僕は、それはそれは有頂天で、その日の夜なんか、眠れなかったくらいだ。


 それからの二年半、僕らは幸福だった。

 いつも一緒で、クラスメートに羨ましがられて、学校中で公認の仲だった。


 だから、高校卒業と同時に認められない仲になるなんて、思いもしなかった。

 大学を出たら、給料の三ヶ月分の指輪を贈って、結婚して。

 そんなありふれた幸福を、手に入れられるんだと、信じて疑わなかったから。



 ――お見合い、しなさいって言われたの。


 それは突然のこと。

 おじさんが大きな会社を経営しているのは、僕だって知ってた。

 でもね、会社を大きくするために、娘を使うなんて。

 おじさんを、見損なった。

 お見合いは嫌だ、って、泣きながら僕に電話をくれたから、走って逢いに行ったのに。

 まさかの、門前払い。

 おかしいだろ。

 昨日までは、普通に取り次いでくれてたよね。


 ――娘にはもう関わるな。


 僕がおじさんと交わした、最後の台詞。

 あんなに僕にも優しかったおじさんが、手の平を返したように、お前に娘は相応しくない、だなんて。

 どうしてそんなことが言えるんだろう。

 納得なんか、できるもんか。

 おじさんの仕事の都合で、僕らを引き裂くなんて、あんまりだ。




- 45 -



[*]prev | next[#]
bookmark



book_top
page total: 62


Copyright(c)2007-2014 Yu Usui
All Rights Reserved.