《Love Songs》
#06_キャンディ:1



 午前4時。

 まだ薄暗くて、肌寒い。

 だけど、僕は。








 コンコンコン。

 窓を指先で3回突くと、カーテンが揺れる。

 合わせ目から一瞬覗いた瞳と視線が絡まると、半分だけカーテンが開く。

 鍵を下ろす、カチリ、という音は、僕が窓を乗り越えてもいい合図。

 ひらひらと風にそよぐカーテンの隙間をぬって、身を乗り出す。


「――んッ」


 するりと伸びてきた華奢な白い腕が、首筋に絡み付く。

 頭の後ろを支えながら、待ち切れずに唇を重ね合わせて。

 縺れるように、そのままふかふかのベッドになだれ込んだ。

 柔らかな身体をきつく抱き締めれば、甘い香りに包まれる。

 この瞬間が、最高に幸せ。


「…起きてたの?」


 乱れた髪を撫で付けながら、鼻先を合わせて囁くと、うん、と頷く。


「寝不足はお肌に悪いんじゃなかったっけ」

「いじわる」


 心外だな。

 僕がいじわるなんて、したこと、あった?

 こんなに、大切にしているのに。

 いじわるしてるのは、いったいどっち?


「おじさんは?」

「昨日からママと出掛けてて、帰ってくるのは今日の午後だ、って言ってた」

「そう」


 でも、油断できないね。

 この部屋に僕が忍び込んでるなんて、おじさんとおばさんが知ったら、今度こそ二度と逢えなくなる。




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