《Love Songs》 #04_やさしく歌って:1 恋に落ちる瞬間、――っていうのを。 あたしは、あのとき初めて体験した。 クラスメートが熱く語っているのを、ふぅん、と、あたしは話半分に聞いているだけ。 「興味なさ気だなぁ、もう。同じ学校の生徒なのに」 話を、要約すると。 同じ専門学校のナントカくんが、ショットバーで弾き語りのバイトをしていて。 その彼が最近、注目されているらしい。 若いのに誰かのコピーに甘んじていないところ、とか。 曲作りのセンス、とか。 その声質、とか。 ただのバイトでいるにはもったいない、と、然るべき事務所からそれなりの話がきていたりするらしい、なんて噂もあったりして。 音楽を生業にしようとして、こうやって、音楽の専門学校に通っているあたしたちにとっては、羨ましい限りで。 興味がない訳ではなかった。 ただ、口惜しかった。 そんなドラマみたいな話の主人公が、あたしだったらいいのに、って。 だから、ちょっと聴いてみるだけ、のつもりだったのに。 [*]prev | next[#] bookmark |