《桜、咲く》
#05_元凶:01




 和紀くんが、あたしを『好きだ』って、言ってくれた。

 和紀くんが、あたしを『鈴』って、呼んでくれた。


 二度目のキスは、気持ちを確かめ合ってからだった。






「なーんか、鈴、雰囲気変わったね」


 終業式が終わって体育館から教室に戻る途中、めぐちゃんにニヤニヤされた。


「彼氏ができると違うなぁ〜」

「かっ、からかうのやめて」


 プニプニと頬っぺたを突いてくる、めぐちゃんの手を押さえる。


「森川くんが鈴を大事にしてくれてて、ホントよかった」


 めぐちゃんはあたしが和紀くんと付き合うのに猛反対だったけど、最近は応援してくれるようになった。


「そういうめぐちゃんだって、彼氏がいるんなら、もっと早く教えてくれたらよかったのに」

「だぁって、言いにくいじゃない? 鈴とは男の子の話、しなかったし」


 彼氏が東高の人――しかも和紀くんの友だち――だということを教えてくれたのは、わりと最近のこと。


「これから逢うんでしょ?」

「うん。待ち合わせしてる」

「明日からは休みだし、学校ないもんねぇ。一日中一緒にいられるよ」

「そんっ…」


 考えたこともなかった。

 一日中、和紀くんと過ごすなんて。


「まぁ、あの森川くんがキスだけで黙ってるなんて考えにくいから。鈴もそろそろ覚悟決めるのね」


 覚悟、って。

 めぐちゃんの言いたいことに何となく察しがついてしまったあたしは、ひとりあたふたしてしまう。

 そんなあたしの様子を見て、めぐちゃんは「森川くん気の毒…」と、ため息をついた。

 なんでよっ!




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