《蛍の群れ》
#03_いろんなこと:16



「や、だぁ…っ」


 こんな思い、何度もしたくない。

 望月さんだって、こんなのよくないに決まってる。


「まだちょっとしか挿れてないのに、こんな痛がるんじゃ、さ…」

「…え?」

「日を改めて、何か別の方法考えてみるよ」


 まだ、ちょっと?

 あんなに大きな衝撃があったのに?

 全部じゃないの?


「未来の嫌がること、したくないんだ」


 頬や首筋にたくさんキスをしながら、望月さんはあたしの髪を撫でる。

 こうするの、きっと望月さんの癖なんだろうな。


「…いや、じゃないよ?」

「うん、けど、」

「ちょっとびっくりしただけ。…痛くない、って言ったら嘘だけど、でも、止めたらやだ」


 痛かったのはあたしだけど、それ以上に痛そうな顔をする望月さんの頬に、下から指を伸ばした。

 あたしだって、望月さんに触れていたいもの。


「教えてくれるんでしょ? …“いろんなこと”」


 あたしの髪を撫でる手が、ぴたりと止まる。

 望月さんの瞳がせわしなく動いて、ゆっくり瞼に覆われた。


「はぁぁ…。もう、ホント、煽り上手で困るよ。どこで覚えてくるんだ? そんな台詞」


 そして再び瞼が上がると、望月さんは頬に伸ばしたあたしの手の平に吸い付き、それをそのままシーツに押し付けた。


「…加減利かなくなったら、辛いの未来なんだぞ?」


 いいの。

 加減なんてしないで。

 望月さんの気持ち、そのまま全部、受け止めたいの。


「いい、無理矢理して…っ」




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