《蛍の群れ》 #03_いろんなこと:10 ゆっくりとベッドに横たえられて、真上から望月さんがあたしを見てる。 髪の中にあった指先は、カットソーのボタンを外しかけていて。 「あ、違…、いやじゃなくて。恥ずか、しくて、」 だって脱ぐんでしょう? と言うと。 望月さんは、カーテンの隙間から漏れる月明かりの中、薄く微笑む。 「脱がしたいね」 「…あたしだけ?」 「先に脱ごうか?」 身体を起こした望月さんは、何の躊躇いもなく、ボタンをつけたまま、シャツを上から脱いで、ベッドの下に放った。 初めて見る、男の人の身体。 「そんな、まじまじと見られると、さすがに俺も恥ずかしいんだけど」 「や、あ、だって、初めて、見た…し、」 ごめんなさい、と、目を瞑ると、望月さんの手が、あたしの手を取った。 「触ってみる?」 捕らえられた手は、ゆっくりと望月さんの胸に添えられる。 固くてゴツゴツしてて、あたしのとは違う。 そして、 「…ドクンドクン、てしてる」 皮膚の下で、速度を増す鼓動が、ダイレクトに、手の平に伝わってきて。 「ちょっと緊張してるし」 「そうなの?」 「そりゃ、ね。未来ちゃんとキスして、ベッドの上にいるんだよ? 緊張、ってか、興奮、かな」 あたしだけ緊張してるんじゃないんだ。 望月さんも同じように思っててくれてるのが嬉しくて、少しだけ身体の力が抜けた。 「興奮してんの、心臓だけじゃないんだよ」 胸に置かれた手が、ちょっとずつ下げられていく。 望月さんがどうしようとしているのか、さすがにあたしにも判って、下げられた腕を強張らせてしまった。 「…あの、っ」 「恥ずかしい?」 おへそのあたりで止まった手を、きゅっと握られて、コクンと頷く。 [*]prev | next[#] book_top |