《蛍の群れ》
#01_一目惚れ:14



 こんなことは初めてだ。

 あーちゃんがあたしを男の人とふたりっきりにするなんて。

 しかも、つ、付き合うとか、そんなの、あたしはあーちゃんに何も聞いてない。


「だってー、あたしが言うことじゃないでしょ。臣人が言わなくちゃ、意味ないもん」

「…」

「臣人になら、未来を任せてもいいかな、って、思ったから、セッティングしたのに」


 そりゃ、あーちゃんの言い分はそうかもしれないけど、だからって。


「いやだった?」

「…」

「臣人とふたりっきりなの、やだった?」

「…そんなんじゃ、ないけど」

「けど?」


 あぁ、まただ。

 望月さんとあーちゃんの、楽しそうな姿を思い出してしまった。

 ズキズキチクチクモヤモヤする。


「…あーちゃんと話してる望月さんを見てるのは、やだった」

「へ…ぇ」


 やだ、って言ったのに、なぜかあーちゃんは嬉しそうで。

 あぁ。息、苦しい。


「それ、どういうことなのか判る?」

「判んないよ」


 今日は判んないことばっかりだ。

 望月さんもあーちゃんも全部判ってて、なのにあたしに判らないような、回りくどい言い方ばっかりする。


「ヤ、キ、モ、チ」

「…へ?」

「臣人が自分以外の人と話してんのが、やなんでしょ?」

「いや、っていうか、…何か、モヤモヤして、ずっと息が苦しかった」


 だったらそういうことなんだよ、って、テーブルに頬杖をつく。


「でも、ヤキモチって、好きな人にするもんなんだよね?」

「そうだね」

「じゃあ何で、あたしが、」




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