《蛍の群れ》
#01_一目惚れ:11



 しないようにしていたのに、望月さんを意識してしまう。

 心拍数が上がって、息が苦しくなる。

 さっきみたいに、ドクドクして、うまく呼吸ができない。

 顔が、熱い。

 どうして?


「…うーん」


 額に手を宛てて、望月さんが困った顔をして。


「やっぱ、明日香の言うとおりだな」

「…何がですか?」

「種明かし、必要?」


 身を起こして、ふぅっ、と短いため息をつくと、額にあった望月さんの手が、あたしの髪を掬った。

 その仕種に、あたしのドキドキが加速し始めて、気付かれないように、そっと深呼吸をしてみる。


「ダシになったのは、明日香だよ」

「あーちゃん…?」


 望月さんの言うことが、よく判らない。

 話についていけないのは、あたしが大人じゃないからかもしれない。


「俺、ね。結構前から未来ちゃんを見てたんだよ」


 まさか明日香の妹だとは思わなかった、と、言いにくそうに首を擦る。


「店でよく見かけてさ。いつか声かけようと思って、ずっとタイミングを計ってた」

「あたし、に?」

「うん」

「どうして?」

「…それ、言わせんの?」


 あたしと望月さんの会話は、疑問の応酬だ。

 成り立っているのか、いないのか、他の人が聞いてたら、何やってんの、って思うかもしれない。

 でも、多分。

 あたしと望月さんの間では、少なくとも会話として成立している。

 根拠はないけど、そう思う。




- 11 -



[*]prev | next[#]
book_top



bookmark
page total: 69


Copyright(c)2007-2014 Yu Usui
All Rights Reserved.