《Hard Candy》 #07_コトバ:01 去年のクリスマスも初詣も、あたしは柾木くんと一緒に過ごした。 冬休みだって、何度も逢ってた。 ただ、心なしか。 逢えば逢う程に、あの頃の柾木くんは、無口になっていたような気がした。 凪が最近、笑わなくなった。 笑っているつもりなんだろうけど、どこか上の空で、いつも何かを考えているような。 そう、柾木くんと別れる直前の、あの微妙な息苦しい雰囲気に似ていて。 少しだけ、怖くなる。 それでいて過保護になった。 過保護、というか、束縛、というか。 凪のバイトとあたしの委員会が重なる日なんかは、大変だ。 絶対に、あたしの委員会が終わるのを、喜多川くんに待たせている。 あたしがひとりで帰るのを、凪は許さない。 そして、家に何時に着いたのか、とか、帰る途中で変わったことはなかったか、とか、もう外に出るな、とか。 こっちが逆に心配になる程のメールが、寝る前に届く。 喜多川くんまで巻き込んで、あたしをひとりにしないようにしている理由が、判らない。 判らないけれど、凪が何かを恐れているのだけは、薄々感付いていた。 「まぁ、アレじゃね? 凪、本気で女と付き合ったことねぇからさ」 委員会が終わって、やっぱり今日も待っていてくれた喜多川くんに、それとなく凪の様子を窺ってみる。 「心配なんだろうよ、何かと」 あたしの心配をよそに、喜多川くんはケラケラと笑う。 「やっぱり、…柾木くんの」 「男は意外と繊細にできてんだよ」 柾木に嫉妬してんだろ、と、喜多川くんはキッシュをフォークで突く。 「っつうかさ、澪ちゃんは気になったりすんの? 凪の過去とか」 「…うーん、ならない、訳じゃないけど」 「けど?」 [*]prev | next[#] bookmark |