《Hard Candy》 #06_メール:07 さすがにこれは、誰にも相談できそうにない。 だけど柾木がまた、この画像を使って何かしでかすかもしれない。 いや、もしかしたら、もう。 他にもあるかもしれない。 考えれば考える程、苛立ちが募る。 「…ぎ、凪」 ポン、と肩を叩かれて、俯けていた顔を跳ね上げる。 「あ? あぁ…」 「ごめんね、待たせちゃった。帰ろ?」 にっこり笑う澪の顔と、さっきの画像が重なる。 ダメだ、俺、ヤベぇって。 「顔色…悪いね。具合悪い?」 放課後の教室。 遠巻きに聞こえてくる校庭の部活の声。 心配そうに覗き込む、澪の眼差し。 「何でもない。帰ろうか」 そう言って、立ち上がるのがやっと。 半分肌蹴た制服のブラウス。 泣き濡れた頬に張り付く髪。 嫌悪と恐怖を纏った瞳。 剥き出しの鎖骨と喉を汚す、白い液体。 顔半分しか、いや、判別できる程には写っていなかったし、少しブレてはいたけど、あの添付ファイルの中で泣いていたのは、澪だった。 澪に見えた、と、いうべきなのか。 澪によく似た他の女であってほしい。 俺の見間違いで、これは決して、澪なんかじゃない。 澪なはずがない。 あのメールを見てから、ずっと、そんなことばかり考えていた。 [*]prev | next[#] bookmark |