《Hard Candy》
#06_メール:02



 逃げられないように首を支えて、啄むように澪の甘い唇を味わう。


「ん…っ」


 軽く触れて、甘く噛んで、ぺろりと舌でなぞる。

 足りなくなって、こじ開けるように上唇と下唇の間に滑り込む。


「…っ、澪…」


 首を支えている右手と、指を絡ませた左手が、だんだん火照り始める。

 ――ダメだ。

 澪の全部が欲しくて、身体中が疼き出す。


「…もう。治るまでダメ」


 また血が滲み出た唇の端を親指で拭っていると、薄く頬を染めた澪が口を開く。


「澪のチューがないと治るもんも治んねぇよ?」

「だーめ」


 ふわり。

 風が澪の香りをそよがせる。


「…きびしーなぁ」


 俺だって、健康な17歳なんだよ。

 キスだけじゃ足りなくなってんのに、そのキスまで取り上げられたら半狂乱だ。


「もう、ケンカしないでね?」


 拳に散った痂(かさぶた)を指でなぞって、顎の下で顔を上げる。

 無意識に煽られんのって、タチ悪ぃ。


「なぁ、澪の香水、何てやつなの?」

「グリーンティー、だけど。…この匂いやだ?」

「んーん。合ってるよ、澪に」


 初夏の風すら、俺を煽る。

 仄かに甘い、澪の香り。

 澪はもっと甘いんだろうな、なんて。





 チャンスはいくつもあった。

 でも、柾木の問題を片付けるまで、澪の初体験をやり直すのはお預け。

 そう、自分に言い聞かせていた。

 何のしがらみもない状態で、澪を感じたいから。


 だから――という訳ではないけれど。

 早いとこ、どうにかしないとな。








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