《Hard Candy》
#04_白い月:01



 放課後は、図書室にいることが増えた。

 澪が図書委員だから。

 仕事が終わるのを、図書室で待ってる。


 いや、見張ってる、が正しいか。








「ねぇねぇ、国領さんって、彼氏いるの?」


 ――あぁ、まただ。

 っとに、油断も隙もあったもんじゃねぇ。


「…え?」


 ポカーンとしてないで、はっきり言ってやれよ。


「あのさ、もしよかったら、俺と――って、えぇ!?」


 書架棚の間から腕を伸ばし、後ろから澪を抱き寄せる。そのまま少しかがんで、澪の肩口に顎を置いた。


「みーお? ちゃんと断んないとお仕置きだよ」


 わざと、甘ったるい声で、耳元に囁く。


「なん…、お前、雨宮…!?」


 男の目を見据えたまま、澪の首筋にゆっくりと舌を這わす。


「んッ…、ちょ、やめ――」


 ジタバタと藻掻く澪を、紅潮させた顔で見る、目の前の男。

 このやろ。澪の甘い声、聞きやがったな。


「なんだぁ…。国領さん、やっぱ雨宮と付き合ってんのって本当だったんだ」

「悪ぃね」


 こうやって、悪い虫を追い払うのが、俺の日課。




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