《Hard Candy》
#01_放課後:01



 ドキドキ、していた。

 まさか、自分が放課後の教室でこんなことするなんて、思ってもみなかった。

 それも、あたしのほうから持ち掛けて。

 彼とまともに話すのは、初めてなのに。





「…も、そろそろいい?」


 耳元で囁く、彼の低い声。


「ん…」


 その瞬間に襲いくるであろう未知の痛みを想像して、きつく目を閉じる。

 ドクン、ドクン、と、跳ね上がっている心臓に、彼は気付いているはずなのに、何も言わない。


「大丈夫だから、力抜いて」


 狙いを定められたソコに、一際、ぐっ、と、重たく圧力が加わった。


「や、待っ…」

「怖くないから」


 何故か甘く囁かれているような錯覚すら覚えて、泣き出しそうに不安な視線を、彼に向けてしまう。


「いくよ」

「あ、…っ、待ってまだ――」

「いつまで待たせるつもり?」


 クスリ、と笑う低い声が、鼓膜を直撃する。


「だって…、やっぱり怖い」

「今さら、やめる、なんて言うなよ」

「…ねぇ、痛いよね?」

「どうだろ。痛みなんて人によると思うけど…、何だ、俺、信用ないの?」

「そういう訳じゃ、」

「ぷ、泣きそうんなってんじゃん、お前」


 思いがけず髪を優しく撫でられて、顔が赤くなったのが自分でも判り、俯いてしまう。




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