《Hard Candy》
#02_初体験:02



「なぁ、国領、知らね?」


 保健室に行ったことなんて、微塵も気付いていない風を装って、塚本に声をかけてみる。


「さっき保健室行ったけど。…なーに? 雨宮、澪が気になるの?」


 案の定な返事で、案の定な顔をする塚本に笑ってしまいそうだ。

 お前、澪のツレだろうがよ。
 面白がってんじゃねぇよ。


「英語のノート借りてたから、返そうと思ってんだけど」


 なんてのは嘘。


「澪のノートねぇ…」

「何?」


 含みのある塚本の口ぶりが、俺の嘘を見透かされたような気にさせられる。


「なんでも。…あ、ねぇ、じゃあついでに澪のカバン持ってってあげてよ。澪、家まで送って行きたいんだけど、あたしバイトだから行けなくて、よかったら家まで送り届けてやってくれるといいなぁー、なんて」

「…いいけど」

「よかった! じゃ、澪のことよろしくね」


 あまりにも筋書き通りな展開で、若干気持ち悪い。

 塚本、鈍くはなさそうだからな。何を嗅ぎ取ったのか知らないが、遠慮なく、塚本のお膳立て通りにさせてもらう。


「澪の寝込み襲わないでよ」

「バカ言うな」


 澪のカバンを受け取って、浮足立ってるのがバレない程度に廊下を急いだ。



 寝込み、ね。

 そんな主義じゃねーし。


 起きてるときにもういただいたよ。

 唇は、ね。




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