私が望んでいた物は全て 泣いてしまった。 告げる事など出来ないと思っていた、私のこの想いを告げながら、大好きな人の前で泣いてしまった。 私は、仁王君の事が好きでした。 仁王君の傍にいて、仁王君と笑い合っているだけで、良かった。 この気持ちは一生伝わらなくていいと、むしろ、伝えたくないとすら思っていた。 仁王君は、きっと私の気持ちを知ったら拒絶するだろうから。 先日丸井君に聞いた事がある。 仁王君が、また私を騙そうとしていると。 だから、どのような騙し方をするのか、恥ずかしながら内心楽しみにした。 ですが、私を好きだ、なんて嘘は、私には至極辛いものだった。 だから、私は、思わず、あんな事を。 『……貴方は、貴方は最低な人だ!』 嘘なのかも確かめもせずに、私は仁王君に罵声を浴びせた。 ただ怒りに身を任せ、その場を離れた。 それでも、 仁王君は、傷ついた表情を浮かべていた。 私は後から後から後悔の念に駆られた。 ぼうっと、六時間目に私は外を見ていた。私らしくもないけれどつい見てしまった。 そこには、目立つ銀髪がいた。 私の方を、見ているような気がした。 部活に仁王君は来ず、柳君が仁王君の荷物を持って行くと言い出した時に、私は自分に行かせてくれと頼んだ。 けれど、柳君は頑なに私が行く事を拒んだ。 そして丸井君と臨時とはいえダブルスを組まされてしまった。 久々に他の人と組むダブルスはどこかやりにくくて、私の体は思うようにボールに反応してはくれなかった。 そして次の日。 仁王君と柳君は朝練に来なかった。 その事について、幸村君から休憩が終わる前に連絡しておくように、と幸村君から私は幸村君の携帯を預かっていた。面倒だから自分からかけたくないと。 だからかけた、なのに、電話に出たのは仁王君じゃなかった。 《…今は取り込み中だ。》 すぐに切れる電話。私はその場で放心してしまった。 なぜ、柳君が。取り込み中とはなんなのか。 そのことを携帯を返す時に幸村君に言えば、幸村君は眉をしかめた。 だから、仁王君に聞こうと思って、仁王君に昨日の事を謝ろうと思ったのに、 『…やだっ…参謀…!』 私は、 拒絶された。 20110606 [*前] | [次#] 目次へ帰ル |