「うん。虫歯だね、マイ」

私の口の中を見た雪ちゃんは笑顔であっさりと死刑宣告をした。

『う、嘘嘘!痛いの気のせいだったみたいだから歯医者さん行かなくて大丈、』
「マイ?」
『はい。行きます』

真っ黒い雪ちゃんの笑顔に逆らうことなどできるはずもなく、わたしは土曜日に歯医者さんに行くこととなった。


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土曜日。雪ちゃんは突然任務が入ってしまったので、暑い日差しの中を燐ちゃんと一緒に歯医者さんへと向かう。わたしが逃げないようになのか、燐ちゃんは家を出たときからずっとわたしと手を繋いでいる。確かに怖いけど、もう逃げ出すような年齢じゃないんだけどなぁと心の中で呟くけれど燐ちゃんにそれが聞こえる訳がない。これから聞こえてくるであろう歯医者さん独特の機会音を思い出すだけで顔が真っ青になるのが自分で分かる。

「おい、マイ。大丈夫か?顔が真っ青だぞ?」
『大丈夫。怖くない怖くない』
「でも、ちょっと怖いだろ」
『う、うん』

だよな、俺もまだ歯医者は怖えし。と言うと燐ちゃんはわたしの頭をガシガシと撫でる。せっかく雪ちゃんに可愛く髪を結んでもらったのに崩れちゃう!!必死に頭を守っていると燐ちゃんはそれに気がついたのかすぐに止めてくれた。そして、わたしと目線を合わせるようにしゃがんだ。

「今日、怖いの我慢して治療したら帰りにコンビニで何でも買ってやる」
『本当?何でも?』
「おう!男に二言はないぜ」
『燐ちゃん、約束だよ』

小指を差し出せば燐ちゃんはそっとわたしの指に小指を絡める。

『嘘ついたら』
「針千本のーます!」

指切った!とお決まりの歌を歌い終わると絡めた小指を離す。よし!じゃあ、そろそろ行くかと立ち上がった燐ちゃんがわたしに手を差し出した。差し出された手を握ったあと、遠くから聞こえる蝉の声を聞きながらわたしと燐ちゃんは歯医者さんを目指して歩き出した。


指切りしてみた!


『燐ちゃん、このアイスにする!』
「どのアイスだ?...って、ハーゲ○ダッツ!?マイ、他のアイスで欲しいのないか?」
『燐ちゃん、何でもって言ったよね?男に二言はないって言ったよね?』
「そ、そうだったな。ははは、(まさかマイがハーゲ○ダッツを選ぶとは...。)」


2013.8.30