『雪ちゃん』
「どうしたの?」
『メフィストさんのところにお泊まりしに行きたい』

わたしがそう言えば、授業で使うために作ってひとまとめにした大量のプリントをバサッと床に落とした雪ちゃん。そして、隣の机で死にそうな顔をしながら勉強していた燐ちゃんもすごい勢いでこっちを見てきた。え、なにこれ。どういう状況?ひとりでおろおろしていると、雪ちゃんは床に落ちた書類を気にすることなくわたしに一歩近づいて両肩をガシッと掴んだ。こ、怖い。怖すぎる。

「ごめん、マイ。もう一回言ってくれるかな?」

素敵な笑顔全開すぎて本気で怖い。そして気のせいかもしれないけど掴まれた肩が痛い気がする。

『め、メフィストさんのところにお泊まりしに行きたい』
「誰のところに泊まりに行くって?」
『メフィストさん』
「フェレス卿のところ?ダメに決まってるだろ?」

もう、やだ。さっきまでの自分を恨みたい。わたしはなんでこんな目にあってるんだ。

『燐ちゃん、』

ダメもとで助けを求めてみる。

「マイ、今回だけは俺も雪男と同じ意見だ」

諦めろ、と燐ちゃんは無情にも言い放った。パパがいなくなってから、お兄ちゃんたちはなんだか更に過保護になった気がする。


いしてみた!


「マイ、遊んでやるから機嫌なおせって!な?」
『やだ!メフィストさんのところにお泊まりしに行かせてくれたら機嫌なおすもん』


2013.3.13