『こんにちは』
「こんにちは。君は僕が見えているのですか?」
『見えるよ』

学校からの帰り道。木の枝にぶらさがっている不思議な人からの視線がすごく痛かったので思わず挨拶をしたら、見えるのかと聞かれてしまった。つまり、この人は普通の人には見えないということになるのだろう。やってしまった。頭の中はただ、それだけだ。普段から耳にタコができるほどパパと雪ちゃんから幽霊や悪魔に声を掛けるなと言われていたのに。わたしがひとりで青ざめていると相手はくるりと木の枝から降りてわたしの前に立っていた。さっきはシュークリームを食べていたのに、今は棒付きキャンディをバリバリと食べている。

「僕はアマイモンです。君の名前は何というんですか?」
『わ、わたしは...マイです』

わたしが名前を答えれば、マイですかと名前を何回か繰り返した。そして、スタスタとわたしの近くにやって来て同じ目線になるためになのかアマイモンさんはしゃがみこんだ。

「僕はマイが気に入りました。マイは僕との相性がいい気がします。」
『はぁ…』

まぁ、気に入ったと言ってもらって悪い気はしない。だけどいきなりそんなことを言われても困る。

「僕の助けが必要なときはいつでも呼んでください。マイのためならどこにでも行きますから」
『あ、ありがとうございます?』

なんだなんだ。新手の誘拐方法なのかと困惑していると、アマイモンさんは突然立ち上がった。

「もっとマイとお話したいのですが、兄上が戻って来いと言っているので帰ります」

わたしに喋る隙を与えず、言いたいだけ言ったアマイモンさんは消える直前にほっぺにちゅっとキスをしていった。


しかけてみた!


「兄上」
「どうしたアマイモン」
「マイってどうしてあんなに可愛らしいんですか?」
「おまっ!?マイに会ったのか?」
「はい。さっき声を掛けられました」


2013.3.4