なんだなんだ。この前は雪ちゃんで今回は燐ちゃんなのか。お出掛けから帰ってくると、同時に家の中からすごい声が聞こえた。
玄関で靴を脱いで廊下を進むと救急箱を持ったまま階段の上を見つめている雪ちゃんがいた。わたしに気がつくと、おかえりと言ってくれた。

『ただいま雪ちゃん。もしかして、さっきの燐ちゃん?』
「うん。ちょっと喧嘩してきたみたいでね。しばらく部屋に行っちゃだめだよ」

わたしの頭をぽんぽんと撫でて雪ちゃんは救急箱を片付けに行った。それを見届けたわたしは、雪ちゃんの言いつけを守らずそっと階段を登る。そっと部屋のドアを少し開ければベッドに横になっている燐ちゃんを発見した。足音をたてないようにしながらベッドに近づいて、燐ちゃんに声をかける。だけど返事なんて返って来ない。おいおい、やっぱり双子だな。少しベッドから離れ、助走をつけてベッドに飛び乗る。うぎゃ、と燐ちゃんが変な叫び声をあげた気がするがまぁいいか。壁のほうを向いている燐ちゃんの背中にぴたりとくっつく。

「マイ、雪男に俺のところに危ないから行くなって言われたろ」
『言われた。でも、危ないとは言われてないよ』
「じゃあ、危ないから俺に近寄るな」
『やだ。燐ちゃん、危なくないもん』

あ、黙った。わたしが部屋から出たら燐ちゃんひとりになっちゃうから出て行くもんか。雪ちゃんのときのようにぽんぽんと今回は頭を叩いてあげる。しばらくそうしていると、燐ちゃんのほうからすすり泣く声が聞こえた。まったく泣き顔を見せないなんて本当に似た兄弟だなと思った。


ぐさめてみた!その2


『(ねぇ、燐ちゃん。これ以上叩いたら燐ちゃんの頭がもっと馬鹿になっちゃう気がするよ)』
『(だから、はやく泣きやんでいつもみたいに一緒に遊ぼうよ)』


2013.2.19