世間がバレンタインに向けて準備をしているように、わたしもバレンタインに向けてチョコをつくっている。ちなみに今日は燐ちゃんに手伝ってもらっていない。わたしひとりで作っているというところを強調しておきたい。さっきからキッチンのドアからこちらをじっと見ている三人の視線が痛い。すごく痛すぎる。三人というのはお察しの通り、パパ、燐ちゃん、雪ちゃんの三人である。作り始める前に誰に贈るのかと質問攻めにあったのだが、無言を貫き通した。だって、パパと燐ちゃんと雪ちゃんにあげるって言っちゃったらびっくりさせられないし。なんとか溶かしたチョコレートを型に入れ、冷蔵庫の中にいれる。よし!あとは固まるのを待つだけだ。片付けを終わらせて、ドアの向こうにいる三人に声をかける。

『もういーよー』

すると三人は勢いよくキッチンの中に入り、わたしのところにやってきた。パパは思いっきりわたしを抱きしめ、燐ちゃんは上手くできたのかとわたしに聞きてきて、雪ちゃんは怪我してないかとわたしの手を一生懸命見ていた。そんな大袈裟な、と思いながらわたしはどんな風にラッピングしようかとぼんやりと考えていた。


ってみた!


バレンタイン当日
『パパ、燐ちゃん、雪ちゃん!チョコレートあげる』
「マイから手作りチョコレートをもらえるとは…パパは嬉しいぜ」
「なかなか上手くできてるじゃねぇか。上出来、上出来」
「マイ、ありがとう。大切にたべるね」


2013.2.15