「昨日はよく眠れた?」
「は、はい!」
木枯らし荘の家主さんの木野秋さん。とっても美人さんで優しいお姉さんです。
昨日からお世話になっている木枯らし荘。
憧れの雷門中に通う為にはどうしても家からじゃ遠くて木枯らし荘でお世話になることにしました。
まだ他の住んでいる人と誰も会っていないですけど、秋さんによればみんなサッカーが大好きだとのこと。
会うのがとっても楽しみです!
…と言っても皆さん社会人さんばかりらしく既に朝早く出勤したそうです。
「そう言えば…千裕くんはどうして雷門に?」
「サッカーが大好きなんです!10年前の雷門イレブンに憧れてサッカー始めたんです」
「ふふ、じゃあサッカー部に入るのかな?」
「あ、や…入るかは…分かんないです」
「そうなんだ。でも明日から憧れの雷門だもん、きっと毎日が楽しいよ!」
「はい!」
秋さんと別れて、散歩でもしようかなと思い木枯らし荘を出て秋さ
んに教えてもらった河川敷のある方に向かった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「うわぁ!グランドがある!」
そこの河川敷にはサッカーが出来るグランドがあって、しっかりとサッカーポストもある。
「いいなぁ…サッカー…」
グランドまで降りて転がっていたサッカーボールを手に取る。
何故だかそのサッカーボールには稲妻マークが入っていた。
秋さん変に思ったかな?
サッカー部に憧れて雷門に来たのにサッカー部に入らないだなんて…。
サッカーしたい。
ほんとは憧れの雷門でサッカーするつもりだったけど、いざとなると怖くなる…。
人前でサッカーなんて出来っこない。
また周りを傷付けちゃうだけだもん。
「わたし、馬鹿だから…」
目頭が熱くなって、じわーっと涙が浮かんでくる。
思わずの涙で急いで俯くと何処からか声が聞こえてきた。
「すいませーん!ボールみませんでしたかー!?」
「…ボール?」
声が聞こえてきた方に視線を向けると、ジャージを着た男
の子がいた。
「あ、ボール?」
ボールの持ち主なのかなと思い差し出すと、男の子は笑顔で受け取ってくれた。
「ありがとう!練習してたら蹴り上げちゃって………ってえええぇ!!?な、泣いてるの?ボール当たった?うわわごめん!!!」
男の子は慌てた様子で勢いよく頭を下げてきた。
「ち、違うよ!ボール、当たってないよ」
「そうなの?…あ、えっと、男は泣いちゃだめだよ!」
「ふぇ…?えっ、え、」
笑顔で頭を撫でながら言う男の子。ほのかに顔が火照っていくのが分かる。
「って昔父さんによく言わてたんだけど……ってあれ?聞こえてる?」
な、なんだろ!!?
あれ…?妙に恥ずかしい…
あれれれれ………?
「ごめんなさい!!!!」
いてもたってもいられなくなって、わたしは全力でその場から逃げ出した。
「え、なんで!?」
なんでこんな気持ちになっちゃったんだろう?
だって春だもの
(再開するまであと数時間)