あっちこっち。 | ナノ


 
 
 
大きな稲妻マークがシンボルの中学校に入学して気付けば1年が過ぎようとしている。



今日は始業式。

面倒だと思う一方で頭に浮かぶのは内申のこと。

体を起きあがらせ、寝間着を脱ぎ捨てシンプルな制服に腕を通す。



時刻はまだ6時。
なにも始業式の朝にまで朝練なんてやらなくてもいいじゃない。

管理サッカーに練習なんて必要ないだろと思うけども、名門のプライドと言うものだろうかとも思う。




明日は入学式だけれども果たして新入生は来るんだろうか…

入ったって、今の日本中学サッカーの現状を知れば絶望して辞めていくのが落ちでしょうけど。





「1年、かぁ…」


名門サッカー部のマネージャーをやれば教員からのウケもいいと思って入ってから1年。



他にもマネージャーはいるけど仕事の量はそれを増す。

朝早ければ夕方は日が暮れるまで練習をする、鍵当番の日は最後まで残っていなければいけないから本当に面倒。





「はぁー…このままなら三年間皆勤も狙えんじゃないのあたし」



サッカーに捕らわれ苦痛に感じている訳じゃないけれど、あたしだって年相応の青春ってやつをしてみたい。



それでも1年前の自分に後悔はない。と、思う。





「…ん、こんな朝早くから電話?」


携帯のディスプレイには南沢さんの字が表示されていた。



「はい、三浦です」

『お前まだ家でてないよな』

「出てませんけど」

『じゃ、この前話したCD持ってこい』

「うわぁ命令形ですか」

『何をいまさら』

「そんなんだから後輩から先輩って呼ばれないんですよ」

『大きなお世話だ』


この人顔だけは良いんだからもっと慕われるような性格になれば学園ライフ最高だろうに。


携帯を片手に某バンドのCDを探していると、携帯の向こうの南沢さんが変な声を上げた。


『いだッ!ちょ、お前らあああああぁぁああぁあ!!!!!!』

『逃げろーっ』

『南沢さん襲撃成功』



南沢さんの声の向こうに恵香と倉間の声がする。

2人は一体何をしたんだろ?



『くそっ…じゃCD頼んだ』


そう言って南沢さんは一方的に電話を切った。




南沢さんの癖に……。




身売りと引き換えに


(偏差値次第の階級だもん)