ついに憧れの雷門中生!
昨日河川敷であった天馬くんは偶然にも同じ木枯らし荘の住人で、彼もサッカー大好きなんだって!
河川敷での謎の火照りも特にわからなかったけど、自然と意気投合して一緒に登校することになった。
「うわぁ…凄いね天馬君」
「うん!ねぇサッカー部行こう!」
「え、あっ天馬くん待ってよ!」
隣にいた天馬くんは凄い速さであっという間に居なくなっていた。
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急いで天馬くんを追って桜並木の道を抜けると、雷門の校舎と比べるとだいぶ古く老朽化が進んでいる小さい小屋があった。
そこに天馬くんは立っていて、わたしに向かって手を振ってくれた。
「こっ…これが雷門サッカー部の部室!ぼく感動!」
「だよねだよね!おれ凄い興奮してきた!!」
「でも…だいぶ古いみただけど……使ってるのかな?」
「何かご用?」
「うわああ!?」
「す、すみません!」
私とは違うどこか大人の含みがある女性の声が聞こえた。私と天馬くんは声がした後ろを振り向くと、一番に赤い眼鏡が目に入った。
「え、ああ…驚かせちゃった?ごめんなさいね」
「び、びっくりしたー。あ、これサッカー部の部室ですか?」
「それは記念に残してあるずーっと前の部室今は使用してないわ」
「そうなんですか…」
「あれ、じゃあ今の部室はどこにあるんですか?」
周りを見てみても部室らしき建物が見あたらなくて私が首を傾げると、赤めがねの女性が、くすりと笑って"こっちよ"と手招きし案内してくれた。
天馬くんと私は一度顔を見合わせてお互い笑った。
三年の教室がある第二校舎の横を通り、第一校舎の裏にある横道に入り、校舎とはまた違う大きな建物が見えてきた。
赤めがねの女性はまた笑って
「ここよ!」
「こ、これが部室!?」
「す、凄い大きいよ!」
「部室じゃなくてサッカー棟よ」
「「サッカー棟!?」」
「え、じゃあこれ全部サッカー部の建物なんですか!?」
「サッカー部って何者…」
私が呆気にとられていると天馬くんは逆にどこか楽しそうにサッカー棟を見ている。
「ここが雷門サッカー部!」
「天馬くん楽しそうだね」
「だって憧れの雷門のサッカー部が目の前にあるんだよ!」
「ぼく心臓がドクドクいって止まんなくて、な…なんか気持ち悪くなってきたかもしれない!!」
「ええぇ!?だ、大丈夫?」
「だ、大丈夫…!うん」
天馬くんが何度か背中をさすってくれて私たちは眼鏡の女性に向きなおした。
「で、私がサッカー部顧問の音無春奈です」
「サッカー部の顧問だったんですか!?」
「あれ……音無先生ってどこかで見たことが……」
「それで君たち何の用だっけ?」
「おれ新入生で、入部希望なんです!」
「ぼ、僕もです!」
「えっ…サッカー部に?」
何か変なことを言っちゃったかな…?音無は一瞬目を見開いたけど、すぐに微笑んでくれた。
「松風天馬と言います!」
「あ、萩原千裕です!」