あっちこっち。 | ナノ


 
 
 
 
「朝だよ、起きな?」


「無理眠い休む」


「はい却下です」


「はい却下で返しますー」


「ったく…」



毎朝恒例行事となったつくし姉がうちを起こす声。

あー…始業式とか面倒。


と言うかもう4月なのに朝はまだ糞寒くて布団からすら出たくない。




「ほら典人くんが迎えにきちゃうよ?」


『はよーっす…』

「ほら来たよ」




幼なじみの倉間典人は小学生の頃から毎朝といっていいほど迎えにくる。



「よう、今日も朝からちっこいね」


「はは今日も朝からウザイな男女」


「黙れチビ」


「お前が黙れ性別迷子」


「二人とも黙る!」


「「いでっ」」



つくし姉がうちと典人を軽く殴る。(けっこう痛い)



つくし姉と典人を部屋から追い出し、渋々と制服に着替える。



サッカーは嫌いじゃない。
むしろ好きだし、練習だって嫌いな訳じゃない。


ただ、練習をする意味が分からなくて、練習をサボる癖がうちにはある。



部屋を出る前に鏡を見ると、寝癖が出来ていたが気にせず部屋を出た。





「ん」


「おっせぇ」


「はいはい悪うござんしたー」




行ってきます。とつくし姉に一声かけ家から出た。





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐




朝練に向かうこの時間帯に
もちろん一般生徒はいない




「寝癖できてんぞ」


「ん、知ってる」


「なら直せよ女だろ?」


「一応生物学的にな。面倒だからいい」


「お前なぁ…南沢さんより女らしくねぇな」


「あの人は女々しすぎ」


「確かに」


南沢さんとか内申内申うるさいからどっか行けばいいのに。


あ、嘘うそ。

居なくなると愚痴をぶつける相手が居なくなる。

あの人に愚痴をぶつけると決まって最後に「内申の為に我慢すりゃいんだよ」で終わるから楽。

むかつくけど…





「はぁ…」


「なんだよ溜め息なんて」


「南沢さんのこと思い出したらむかついてきたらから」


「お前って何気に酷いよな」


「むかつかせる南沢さんが悪い」


「そんな不憫な…」






しばらく南沢さんについて倉間とかなり盛り上がって話していたら目の前にその本人が歩いていた。

なにやら独り言を言ってるかと思えば、どうやら誰かと通話中っぽい。




「本人発見。どうする?」

「後ろから奇襲決定」

「了解です倉間隊長」





うちと典人は南沢さんの後ろに忍び、ボールを蹴るつもりでおもいっきり南沢さんの尻を蹴った。



「いだッ!ちょ、お前らあああああぁぁああぁあ!!!!!!」

「逃げろーっ」
「南沢さん襲撃成功」


残念なイケメン南沢さんは本当に残念な声をあげた。

疾風ダッシュの勢いで典人とうちは走り出した。





眠い朝の楽しみ方


(サッカーも楽しくやりたい)