軽蔑していた愛情 | ナノ


 
 
 
 
「色気の無いパンツ」


屋上と言えばパンチラはお約束と言っても過言じゃないだろ。

屋上に寝そべっている俺に対して名字は立って風に当たっていたからスカートはなびいて当然ながら丸見えだったりする。



「イチゴ柄は嫌い?」


「男のロマンだろ」



なんて言うと名字はクスクスと笑ってスカートを押さえながら座った。


ブーブーと携帯が鳴ってるのに気付いた名字は、胸ポケットに入ってたスライド式携帯の画面をスライドし確認にしている。




「メール?」

「うん」



いじり終わると再び胸ポケットにしまった。




「南沢くんって、どれくらい携帯使う?」


「あんまり使わないな。メールも自分からブチるし電話も面倒だし」


「意外だねー。南沢くんって授業中も携帯いじってそうなイメージあったのに」


「俺は優等生だからな」


「言いますねー」



アドレス帳に誰がいるかすらあまり記憶にない。

サッカー部のやつらに、家族、友達若干名、あとは一方的に教えてーとやってきたやつら。




「……絵文字みたいな日常なのに、南沢くんってほんと変わってる」


「絵文字?つか、お前に変わってるだなんて言われる筋合いはない」


「えー?私は普通だよ」


「普通な奴は死のうとしたりはしないっつの」


「この世の中が変なんだよ」



名字はにこにこと笑うとスッと立ち上がり、俺を見下ろす形になった。



「この世の中には、ただ見るだけじゃ視えないものもが、いーっぱいあるんだよ」


「目の前のことが全て真実じゃないって言いたいのか?」


「うーん微妙に違うかな」


「ふぅん」


「あ、グラウンドに倉間くんがいるよー」



名字はフェンスにしがみつくようにグラウンドを見る。

その姿は普通なのに、時折みせる他とは違うあいつは本当に訳が分からない。


どこか消えそうで泣きそうで、それでも笑っていて。



まぁ、今のところ分かってることは少ないが、とにかく名字は繊細で変なやつだって事は分かってる。



なんとかなるだろ。

知りたい欲ってのも前よりは無いし、今は少しでも理解してやるっていう気持ちの方が大きい。



それに、


「サッカーしてんじゃん」

「あ、なんか凄いシュート打ったよ!」

「いやいや授業程度で使うなよ」



楽しそうだし。



風が強く吹くと、またイチゴ柄のパンツがチラチラと見えた。


苺柄パンツと屋上