軽蔑していた愛情 | ナノ


 
 
 
 
「名前はね、名字名前。南沢くんと同じ3年だよ」



場所を屋上からサッカー部の部室に変え話を聞くことにした。

なんで部室かというと、屋上より人が来る確率が低いというそんな理由。




「へー…サッカー部の部室って、雷門中でひときわ凄い造りだよねぇ」




珍しいものをみるように部室の隅々まで嬉しそうに見渡していた。


なんだよ、案外こいつ楽しそうにしてんじゃん。




「なぁ…お前「あ、なに女連れ込んでるんすかエロ沢さん」…は?」


俺の言葉を遮ったのは、学校指定のジャージ上下に身を包んだ倉間だった。

しかも影で俺をエロ沢呼ばりする奴はお前だったのか!!




「なにしてんだよ」


「エロ沢さんこそ。俺は体育がサッカーらしいんでスパイク取りにきたんですよ」


「ふぅん…俺は、まぁ暇潰し」

と、俺は名字を指差して言う。



名字を見て倉間は眉間に皺を寄せ訳が分からなそうに首を傾げた。名字は相変わらず部室に興味津々で倉間が居ることすら気付いていない様子。





「おい名字、おい」


「え、うん?」





何度か呼ぶと名字は気付き、トコトコと効果音がつきそうな感じで俺が座っているソファーに近付いた。



その時やっと倉間に気付いたらしく、軽く笑って手を上げた。

なかなか人と慣れあわない倉間はそれを横目で受け流した。





「で、誰なんですか?遊び、本気?それとも」


「お前が俺に対して持ってるイメージがわかったよ」


「冗談ですよ、たぶん」


「しばくぞ?」


「やれるんならどーぞ」




頭一つ分くらい小さい倉間を見下ろしていると、横から小さく笑い声が聞こえた。



「ふふ…兄弟みたい」


「誰がこんなのと!!!」


「こんなのとはなんだ。仮にも先輩だぞ」


「仮にもでいいなら何度でも呼びますよ、先輩」


「チッ…相変わらずむかつくなお前は……」



俺が舌打ちしたのと同時に授業開始の鐘が鳴った。

鐘が鳴ったのを聞くと、倉間は顔を歪め出口に足を向け走った。


あいつなんだかんだ根は真面目な奴だからな。






「さて、お前これからどうするんだよ?」


「んー…取り敢えずもう少し生きてみる」


「おれ、お前のこと何処まで知っていい?」


「わっかんない。わたし知らない間にたくさん求めちゃうから、だから、少しずつ仲良くなろ?」


「求めるって、何を?」


「ふふん。まだ内緒」



端からみれば、まるで成り立っていない会話のようなもの。


考えれば考える程こいつの思考はわからないし、隠すように笑う。




「あ、でも今はこれだけは言えるよ」

「ん、」



「ありがとう」



先ほどと変わることのない笑顔で名字は呟いた。


¨じゃあ授業行くね¨と言い捨て部室から小走り去っていった。






求める事を隠す少女と