至福のひととき
「え、お昼…?」
「お、おおおう!い、い、いっ一緒に食べないか!?」
吃りまくりの風丸の右手にはしっかりとお弁当の包みが握られていた。
初々しい風丸が可愛くておもわずキュンと胸がうたれてしまう。
「風丸って絶対に誘い受けだよねー。そんなんだから円堂くんと出来てるとか噂されちゃうんだよ?」
「う、うけ…?」
「ううん何でもない!それじゃあ何処で食べる?あ、今日は雨降ってるから屋上は無理だね」
「あー…そうだな、……って、いいのか!!!?」
「だって一応彼女だもん」
風丸に失礼無いように一応を強調して言ったら、風丸は一瞬悲しそうな顔をした。
あれ、その反応は予想出来なかった。何か気に障ること言っちゃったかな…?
「一郎太…?」
「…え、あ、悪い。それじゃ空いてる選択教室いこうぜ」
「はーい」
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そうしてやってきたの三階にある、主に国語科の授業で使用される選択教室。
「あっ!」
「ど、どうした?」
「お弁当って作ってきてあげるべきだった?でもあたし料理出来なくて、おにぎり握っても四角くなっちゃうある意味天才肌なんだ!」
「確かにそれはある意味凄いな……あ、いや別にそこまでしてくれなくて大丈夫だからさ!」
「ならいいんだけど…」
ほんと今まで料理なんてしてこなかったよ…
お弁当も毎朝お母さんが作ってくれてるし。
「やっぱり女の子としては出来るべきなのかな、秋とかは凄い上手だしなぁ…あっ!今度教えて貰おう」
ぶつくさと呟いていると隣りにいる風丸から笑い声が聞こえた。
「なーに笑ってんの?」
「だ、だって1人で百面相な勢いでコロコロと表情変えるからさっ…ごめ、笑いが抑えられなくて!!ふはっ、は」
「笑いすぎだっての!そんな君にはこうしてやるー」
「ふわっ!?」
風丸の両頬を掴み左右に広げる。
「ふぁひぃふふんふぁよー」
(なにするんだよー)
「うー…可愛い顔は何しても可愛いのね……悔しいです!!」
左右に広げてもけして変顔にならないという素晴らしい顔の持ち主、ほんと整ってる。
「いい加減にっ…しろ!」
「え?わ、きゃっ…」
なんとも乙女らしい声を出してしまったかと思う。
風丸は頬をつかむ私の手を掴みそのまま押し倒す形にになった。
男女の力の差なんてのは歴然としていて、抵抗も虚しく形勢逆転されてしまった。
「か、風丸さん…?」
「可愛いなんて嬉しくない。俺は、その…相模はか、か、」
「…か?」
「かっ可能性を感じる!」
「可能性?え、なになにどうしたの?」
「〜っ…な、なんでもない」
「そうなの?あ、…じゃあそろそろ離して?」
「え?あっ!ああ、ごめん」
無意識でやってたの!?
言うと風丸は直ぐに離してくれた。
お互いにお弁当を広げ食べ始めると、自然と会話がなくなって黙々と食べ進めた。
ときどき目が合っては笑いあって、それがなんとなく心地良かった。
いつまで彼女のフリすればいいのか気になってたけど、うん、彼女のフリも悪くないね!
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映画で雷門は給食があることは分かってるんですけど、敢えてこの中ではお弁当ってことで!