疾風ハニー | ナノ
彼女、始めました!


 
 
 
カキーンと今日も爽快な音がする。

この音は大好き。



野球。甲子園を目指して常日頃から頑張る部員にはトキメキすら感じる。

(甲子園とか高校生の話だけど)





廃部寸前のサッカー部とは違って優秀、去年の夏大は関東大会までいけた!

(初戦で負けたけど…)






「あづさせんぱーい!」


可愛いい1年生マネージャーがパタパタと小走りしながら私の元へとやってくる。



「んー?」


「あの、先輩を呼んでくれって言われたんですけど…」


「わたし?」


「はい」



彼女がやってきた方を見れば
私が敵視している部活のユニフォームが見えた。





「なんで、サッカー部…?」


「さぁ…」








───────





「おー 誰かと思えば風丸じゃん!あれ、陸上部じゃなかったっけ?」


「ああ、今は助っ人みたいな感じなんだ」


「ふーん。で、用って?」


「実はな…野球部からサッカー部の助っ人を…」


「断る!!」


「だよな…」




こいつはいきなり何を言い出すかと思えば、野球部の部員にサッカー部の助っ人を頼もうとした!


いやいやいや、野球部も新入生が入って新しいチームとして形成していかなきゃいけないのにサッカーなんてやってる暇はないの。





「ごめん。サッカーが嫌いとかの前に、野球部も大変な時期なのよ。」


「あ、じゃあ…個人的にお願いがあるんだ」


「お願い?」





ここじゃ言いづらいからとサッカー部の部室の裏っちに移動することに。








────────






「うん、いいよー」


「本当か!?」


「うん本当に本当」



風丸のお願いとは、所謂、彼女のフリをして欲しいとのことだった。

Wストーキングされてるらしく、その子たちに止めるよう話したら、彼女がいたら諦めます!とか言われちゃったらしい…




Wストーキングのうち一人は宮坂くんらしいんだけど……彼はホモなの…?


もう1人は1年生の陸上部の女の子だと。





「まぁ…風丸って陸上馬鹿だと思ってたから女の子の知り合い少なそうだよね」


「うるさい!と、とにかく相模しか頼める人がいないんだって」


「それじゃー…今日からハニーって呼ぶね」


「ハニー!!?」


「ダメだった?」




前にやってたドラマで、彼女のフリするのに相手のことをハニーって呼んでたから、てっきりフリする時はそう呼ぶもんなのかと思ったんだけど。





「で、出来ればもっと普通ので頼む」


「ん、じゃあ一郎太?」


「なんか呼ばれなれないとくすぐったいな」




それは私だって同じ。

名字より名前の方が言いづらい人って珍しいよね。






「明日から頼むな!」


「うん。家近いし朝練一緒に行こうよ」


「え!?」


「だってストーキングされてるんでしょ?だったらそうしなきゃ、ね?」


「あ、ああ!」













部活に戻ると後輩マネージャーが何か言いたそうにジーっと見てくる。


多分それは連れていかれた理由を聞きたんだと思う。


……フリってことは言わない方がいいんだよね…?





「……彼氏ができたみたい」


「えぇ!?ま、まさかさっきの女顔のサッカー部の人ですか!!?」


「え、あー…うん」



なんだか改めて彼氏と言うとくすぐったい。

初彼がフリってのも悲しいけど、風丸は悪いやつじゃない。


うーん、明日から大変そうだなー…。